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甚だ遺憾ながら幸せです、それではまた

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 口下手な義勇がそんな言葉を上手く伝えられるわけもなく。なにも言えずに炭治郎をただ抱き締めたのは、三年前のこと。そして今も義勇と炭治郎はともにいる。あのときと同じように熱を分け合い、二人で蕩けて弾ける。幸せに包まれて。
 そしてきっと、それはずっと、ずっと、続くのだ。
 終わりの後も、きっと、ずっと。いつかまた、遠い遠い未来にも、ずっと繰り返す。

 ──ねぇ、義勇さん。約束してください。もしも俺が先に死ぬときには、絶対に笑ってくれるって。俺も笑います。義勇さんに最期に見てもらうのも、俺が最期に見るのも、笑顔がいいから──

 ──お礼の言葉や、詫びの言葉は、絶対にいりません。んー、好きとか愛しいとかはうれしいけど、それも却下します──

 ──最期に聞くなら「それじゃあ、また」それ以外はいりません──

 ──死んでもお別れなんてしてやりませんから、覚悟してくださいね。俺は頑固でしつこいんです。知ってるでしょう?──

 ──だから、絶対にまた生まれ変わって義勇さんに逢います。そしたら俺はまた義勇さんを恋い慕うに決まってるから、それまでちょっと離れて過ごすだけのことです──

 ──だから、俺の最期に聞かせてくれるのは、「じゃあまた」って約束の言葉にしてください──

 あぁ、まったくその通りだ。最期に見るのはおまえの笑顔がいい。
 おまえが笑ってくれるのなら、俺も最期は笑って逝くのだろう。仏頂面だと言われる俺の顔は、おまえが笑うとつられて笑みになるようだから。
 一人置いていくつらさや苦しみは、今もときおり胸を痛めつけるけれど、それでもいつかまた逢えるなら笑えるはずだ。
 剣士としてはまったくもって甚だ遺憾ではあるが、俺はどうやら往生際が悪いらしい。おまえと恋仲になって悪くなった。なにしろ鬼殺隊随一の薬師にさえも太鼓判を押されるほどの、死んでも治らぬ不治の病を患っているのだから、それはもうどうしようもないのだ。
 これでお終いなんて、俺も思ってやるものか。もう思えるはずもない。
 だって幸せなのだ。おまえが死ぬまで一人で俺を想ってくれることが。途方もなく、途轍もなく、幸せで幸せでどうしようもないのだから、往生際悪く約束の言葉でおまえを縛り付けて逝くとしようか。

 だから最期の言葉は笑って「それじゃあ、また」

「また、来世で」