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ワクワクドキドキときどきプンプン 2日目

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 思いがけない言葉に、そうなのか? と確認するように錆兎へ目を向ける。ガシガシと乱暴にタオルで髪をこすっていた錆兎は、虚を突かれた顔で手を止めていた。真菰も目を見開いて宇髄を見上げている。

「義勇……私たちが大人になろうとするの、嫌なのかな……」

 かすかに震えている真菰の声。錆兎もグッと唇を噛みしめてうつむいていた。
 まさかの反応に、炭治郎はポカンとして、ちょっと不安にもなった。だって、錆兎や真菰は、義勇のことならなんだってわかると思っていたのだ。それは炭治郎にとってはあまりにも当たり前すぎて、宇髄のたった一言に二人がこんなにも動揺するなんて信じられない。
 炭治郎が困っていると、軽く肩をすくめた宇髄が、真菰の頭にポンと手を置いた。
「俺が初めて教室で見た冨岡は、なんにも興味なんてないし、それこそ自分自身のことだってどうでもいいって顔してたぜ。自分で考えて行動してるわけじゃなく、言われるままに動くだけでいいって感じでよ。感情なんてどっかに失くしてきたって面《ツラ》で、ぼぅっとそこにいるだけだった」
 実際そうだったんだろうけどなと、かすかに眉を寄せ少し硬くて、でもやさしい声で宇髄は言う。続いた「でも」の一言は、なんだかとても強く響いた。
「今の冨岡は違うだろ。いろいろ自分で考えて、うれしがったり派手にビックリしたり、悲しがったりもしてんだろ? 俺にだってわかるぐらいによ。焦るのだって、ちゃんと心があって、自分で考えてるからこそだ。おまえらにかまわれるのを嫌がってるわけねぇだろうが。おまえらが大事だから、自分もしっかりしようって焦るようになってきたんだ」
 喜んでやれよと言って、宇髄は薄く笑う。その小さな笑みに、炭治郎の胸がそわりとうずいた。

 なんでだろう。宇髄さんはいつもどおりに笑ってるのに、やっぱり少しだけ、怒ってるし悲しんでるみたいな匂いがする。

 なにやら落ち込んでいる錆兎と真菰も気掛かりだし、宇髄の匂いも気になるし。当然、禰豆子や義勇のことだって心配でたまらない。いろんなことがいっぺんに頭のなかにあふれて、どうしたらいいのかわからない。
 炭治郎がどうしようと困っていると、煉獄が足早に戻ってきた。絶好の助け舟だとホッとしたのもつかの間、なぜだか辺りを見回した煉獄は、笑みを消し眉を寄せている。
「おう、冨岡大丈夫そうだったか?」
 煉獄に声をかけた宇髄はもう完全にいつどお通りだ。でも笑ったその顔は、煉獄の少し焦った声にすぐに固まった。錆兎と真菰も目を見開いて煉獄を凝視する。もちろん、炭治郎だって同じこと。もしかしたら一番ビックリしたかもしれない。

「禰豆子は来てないのか? タオルを取りに戻ったらしいんだが……」

 まさか(よもや)、迷子? 全員の頭に浮かんだのはそんな言葉だった。