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ワクワクドキドキときどきプンプン 3日目

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 思うが同意なんてできるものか。真菰も同様なのは言うまでもなく、錆兎と真菰はそろって眉尻を跳ね上げた。
「義勇が狙われてるかもしれないんだぞっ、呑気に映画なんて撮ってられるか!」
「そうだよ、本当にこの人達が変なのをまけたのかもわからないじゃない。早く帰ったほうがいいよ」
「捜されてるんなら、いっそ動かねぇほうがいいんじゃねぇの? 移動中に出くわしたらアウトだろ。それに、たとえそいつらがここにきたとしても、捜してるのは『キメツ学園中等部の冨岡って男子生徒』なんだろ?」
 宇髄や煉獄は同意すると思ったのに、意に反して宇髄が言ったのは、そんな言葉だった。
 錆兎と真菰は思わず言葉に詰まって顔を見合わせた。ニヤリと笑って義勇を見やる宇髄の言わんことを察したところで、たしかにとは言いづらい。
 義勇が傷つくようなことは、口が裂けても言いたくない。今の義勇は女の子に見えるから大丈夫、なんて。言えるはずがないだろう、そんなこと。
「うぅむ……まぁ、一理あるかもしれんが……」
 煉獄が口ごもる理由も、錆兎たち同様だろう。義勇本人がまったく気がついていないのはなによりだ。錆兎たちや煉獄の視線のわけを知ったが最後、盛大に落ち込むのは簡単に予想がつく。
「ぎゆさんを捜してるんでしょ? なんで逢っちゃ駄目なの?」
 人の悪意に思い至らぬ禰豆子の無邪気な疑問に、炭治郎もまた不思議そうに義勇を見上げ、「義勇さんのお友達ですか?」とたずねている。
 炭治郎たちは本当に純粋無垢そのものだ。あの馬鹿どもの身勝手な悪意を眼前にしているというのに、捜されていると聞けば即友達だろうと思うくらいには、人の悪感情に疎い。
 純真なのはいいことかもしれないが、ちょっとばかり心配にもなってくるなと思っていれば、宇髄も同じ感想だったらしい。少しあきれた顔で炭治郎たちを見下ろしていた。
「おまえら、知らねぇやつがお菓子やるって言ってもついてくなよ?」
「行きませんよ? 父さんや母さんと約束してますから!」
「禰豆子も行かないよ? 知らない人にはついてっちゃ駄目なんだもん」
「おぉ、えらいな、二人とも! 感心感心。冨岡、相手はキメツ中学の生徒のようだが、心当たりはないのか?」
 二人の頭をグリグリとなでながらの煉獄の問いに、義勇がふるふると首を振った。
 義勇はもともと社交的ではないし、学区外に友人なんていなかったはずだ。優等生だったからガラの悪いやつらとの付き合いもない。だから否定の意を示したのだろうけれど、錆兎や真菰からすれば、義勇の否定は自己評価の低さゆえだと理解している。
 整った顔立ちの優等生。剣道の大会でも好成績。目端の利く少女たちの目にとまるには、それだけでも十分な優良物件だ。去年の文化祭だって、義勇のクラスの模擬店は学区内外問わず義勇目当てな女の子が群がっていたというのに、本人はまったくモテている自覚がないんだから、ため息だってつきたくもなる。
 世の中には逆恨みってものもあるんだぞ? 義勇がなにもしてなくても、惚れた女の子が義勇のファンだってだけで恨みを持つやつだっているかもしれないんだぞ?
 そう言ってやりたいところだが、義勇は理解しないこともわかっているので、錆兎と真菰はそろって肩を落とすしかない。
 まぁ、惚れた腫れたなんて、錆兎たちだって本当は、よくわかっちゃいないのだけれども。

「この前のやつらが捜してんならキサ中のはずだしな。キメ中に知り合いはいねぇってんなら、人違いの可能性のほうが高いんじゃねぇの」

 恋愛のあれこれははわからなくとも、宇髄のその言葉の裏になにかがあるのは、感じ取れる。らしくない。そんな言葉で言い表すほど宇髄のことを知っているわけじゃないが、それでもそんな楽観は宇髄らしくないと、錆兎は思った。

 さぁ、見のがすな。裏を読め。考えて、考えて、考え抜け。
 守りたいものがあるのなら、男なら、自分が持てるすべてを使って守り抜け。

 じっと宇髄を見つめた錆兎は、真菰もまた自分を見つめていたことには、気がつかなかった。