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ワクワクドキドキときどきプンプン 3日目

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 煉獄の言葉はありがたいが、夏に全国大会出場を控えている煉獄や、意気込みに体の成長が追いついていない幼い錆兎を、荒事に加担させるのは気が咎める。

 あの日の三人組についての情報を集めていくうちに、宇髄がつかんだのは、リーダー格の少年が金で人を集めているというものだった。
 とはいえ、相手は隠れて悪さをするのがせいぜいな中学生である。高校生やゲーセンなどにたむろするいかにもな風体のやつらには、声をかける度胸すらないと、宇髄は踏んでいた。実際、その手の場所を一人でうろついていたという情報も入ってはいない。
 声をかけるなら同じ中学生。小遣い程度の金でも動きそうな、使い捨てできる馬鹿……と、アイツが見下すであろうタイプ。
 義勇が以前通っていたキサツ中学は、いい意味でも悪い意味でも平凡な生徒が多く、問題児扱いされる輩も多くはない。義勇の腕っぷしは知られているだろうし、問題発覚時の自己保身も考えれば、キサツ中学で人を集めることはしないだろう。
 対して宇髄らの通うキメツ学園はといえば、問題児が多いとの評判に誤りはないが、問題行動の内容が世間一般の認識とはかなり異なる。いかにもな不良はいっそ少なく、その手の連中ですら、金で雇われることを良しとしないタイプのほうが多い。
 宇髄が聞きこんだかぎりでは、義勇への悪意を持って接触してきたやつがいるという話も聞かないので、おそらく校内で狙われることはないだろう。
 残るは通称キメ中ことキメツ中学だ。キメ中は三校のなかでは飛び抜けて素行不良の生徒が多いと評判ではあるが、有象無象の印象もまた強い。格好ばかり粋がってはいるものの、腕っぷしや策略はどいつもこいつもどんぐりの背比べで、頭《アタマ》と呼べる者がいない。
 裏を返せば、無法地帯ということでもある。
 タイマンなんてダサいと鼻で笑い、数の暴力をこそ信望する輩に、キメツ学園の不良連中のような思想や美学なんて存在しない。得てしてそういうやつらは、後先など考えず目先の利益に群がりもする。
 金で動くならキメ中という予想は的中したことになるけれど、まったくもってありがたくもないと、宇髄は苦々しく眉をひそめた。
 正直、接触してくるのがキメ学なら話は早かった。キメ学内なら高等部も含めて宇髄は顔の広さを自認している。キメ学の連中になら、やつが接触してきた時点で逆におどしをかけることを要請するのも可能だったろう。すでにそれとなく話を通してもいる。
 だが、キメ中には知り合いが少ない。皆無とは言わないが、おおむね普通の女子生徒ばかりだ。いわゆるヤンチャなやつらとは繋がりがない。外見ばかり飾り立てた中身のないやつらと、誰が付き合いたいものか。
 目まぐるしく考えながら、宇髄は小さく舌打ちした。
 予想は残念ながら的中して、小金に群がる馬鹿はすでに集まってしまったようだ。どれだけ関わってくるかは不明だけれど、有象無象とはいえ数を頼りにされれば面倒なことこの上ない。宇髄だって煉獄に劣らず腕に自信はあるが、さすがに一人で蹴散らすのは無謀すぎる。放っておくという選択肢はない以上、どうにか穏便に事が済むよう祈るばかりだ。

 まずは目撃情報を集めて場所を特定……と考えつつ、一行から離れた場所でスマホを取り出した宇髄は、けれどすぐにポケットへとしまい込んだ。
 ここは大きめの公園で今はゴールデンウィーク。同年代の少年少女が幼い子連れでいるのも、めずらしいものではない。弟妹のお守り中なんだろうと、普段なら目に留めることはなかった。
 しかし、その人物が今回の件に関わっている可能性があるなら、話は別だ。
 攻撃的に逆立てた銀髪、傷跡だらけの顔をした男。それは昨日みんなで出かけたスーパー銭湯で、義勇に声をかけてきた少年に間違いはなかった。
 噂だけなら宇髄の耳にも入っていたその少年──不死川実弥は、素行不良な中学生の間では、学区を越えて有名人だ。キメツ中学に転入してきたのは今学期かららしいが、転入初日に喧嘩を売ってきた輩をすべて叩きのめしたことは、早くも伝説めいて宇髄の耳にも届いている。
 しかしながら、本人にはヒエラルキーのトップなんて認識がないのか、誰とつるむこともなく真面目に部活動にいそしんでいるというのも、よく聞く話だ。それが事実なら、今回の件とは無関係である可能性のほうが高いと、宇髄は踏んでいた。
 だが、心配な要因がないわけでもない。昨夜布団のなかでこっそりと集めた実弥の情報には、裕福とは言いがたい家庭環境についてがあった。転入して間がなく、精査に欠ける情報ばかりだったが、事実なら、人柄が判断しきれない現状では楽観できない。
 一瞬身がまえたものの、実弥は小さな女の子を抱きかかえ、子供たちに囲まれのんびりと歩いている。どう見ても休日に弟妹の子守りをするいい兄貴といった風情だ。
 どうしたものかと思いながら見つめた子供たちのなかに、昨日見た顔があることに気づき、宇髄は小さく目をしばたたかせた。
 髪をモヒカンにした小学生は、昨日迷子になった禰豆子が世話になった玄弥という子に間違いない。世間は狭いというが、まさか実弥と繋がりがあるとは思いもしなかった。
 おそらく実弥の弟なんだろう。だとしたら、より今回の件と実弥は無関係だという気がしてくる。それでも危惧は残った。
 ただの偶然と思いはするが、向かっている先が気にかかるのはたしかだ。実弥が行く方向では義勇たちが撮影の真っ最中で、万が一、実弥が雇われているのなら甚だまずい。
 逡巡はほんの数秒で、宇髄はすぐに実弥たちの後を追った。
 偶然が重なっただけならいい。けれどそうでないのなら、義勇たちとの接触は断固阻止しなければならないだろう。噂にたがわぬ実力なら、宇髄だけで相手をするには荷が重いだろうけれど、場合によってはしかたがない。数を頼みに襲われるよりは幾分マシだ。
 自分だけで片を付けるとの覚悟は思い上がりだったと、煉獄の言葉で思い直しはしたけれど、少なくとも錆兎たちチビッ子どもを関わらせるのは、極力避けたいと宇髄は考えている。
 錆兎はひどい侮辱だと怒るだろうが、幼い体ではどうしようもないではないか。中学生相手に小学一年生がどこまで張り合えるというのだか。
 それに、義勇のことだって心配だ。腕前のほどは承知しているが、精神状態までは宇髄だって判断がつかない。大勢の悪意に晒されどんな反応を示すのかがわからない以上は、義勇をやつらと接触させるわけにはいかないだろう。
 錆兎と真菰の過保護が移ったわけでもないし、助けたい気持ちの大半は自分の後悔への代償行為で、ただのエゴだと自覚してもいる。けれど、理由はどうあれ守ってやろうと決めたのは自分なのだ。

 決めたからには、貫き通すよりねぇよな。

 調べる時間が足りなかったのは口惜しいが、今からでも遅くはない。
 足早に実弥に近づいた宇髄は、端麗な顔にいかにも無害な笑みを浮かべてみせた。
 大嫌いな父親のためでないのなら、笑顔ぐらいいくらでも大盤振る舞いできるというものだ。

 この接触が吉と出るか凶と出るか。さて、どっちだ?