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ワクワクドキドキときどきプンプン 3日目

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「あんたはキメ中では一匹狼だって聞いてるぜ、不死川実弥さんよ。事実かい?」
「……なんで俺の名前まで知ってやがんだァ? 調べたのかよ」
 嫉妬深い彼氏。そんな言葉が即座に浮かんで、あの子のうつむいた横顔と重なった。
 まさかあんなことぐらいであの子を責めたりしてねぇだろうなと、内心でヒヤリとしながら実弥が低い声で問い返せば、男はなぜだか愉快げに笑いだした。
「べつにあんたやあっちのチビッ子どもに含みがあるわけじゃねぇよ。今のとこな」
「そりゃあ、俺の返答次第ってことかァ?」
 ピクンと男の柳眉が小さく跳ねて、男は笑みを深めた。
「察しがいいな。まぁ、そういうこった。金で雇われたキメ中の馬鹿どもに、俺のツレが狙われてる。雑魚はどうにかなるだろうが、あんたもくるなら骨が折れそうだからな。ツレになんかあれば、こっちもチビどもが泣くからよ」
「ツレってなぁ、昨日の金髪かァ? 馬鹿に狙われるタイプにゃ見えなかったが……」
 あの女の子にワッと走り寄っていた子供たちを実弥は思い出す。泣くチビどもとはあの子らのことだろう。関係性は読めないが、冨岡という女の子は子供たちが泣けば悲しみそうだ。
「あいつもツレに変わりはねぇが、今回は黒髪のほうだな」
 言われた瞬間に、実弥は思い切り目を見開いた。
 あの子が狙われている? なぜだ。理由がわからない。あんなにガキどもに慕われてそうな子が、馬鹿なやつらからなんの恨みを買うってんだ?
 実弥の疑問と憤りを悟ったのだろう、男はこともなげに逆恨みの八つ当たりだと口にした。
「冨岡は去年キメ学に転入してくるまではキサ中だったんだけどよ、結構な優等生だったみたいでさ。てめぇの努力が足りねぇのを棚に上げて、アイツが転校した後も自分が褒められねぇのはアイツのせいだって、恨んでるやつがいんだよ」
「ハァ!? おい、どこのどいつだ、その性根が腐りきったやつァ!」

 そんなくだらないことで、あの子を狙うだと? ふざけるな!

 思わず詰め寄った実弥に、男はすっかり相好をくずした。
「あんた、いいやつだな。気に入ったわ。その分じゃ冨岡の件にゃ関わってねぇみたいだし」
「ったりめぇだァ! いくら金を積まれようが、そんなくだらねぇ理由で人を襲おうって馬鹿の言いなりになるわきゃねぇだろうがァ!」
 怒鳴った実弥に笑った男が、ふたたび視線を玄弥たちに向けた。
「あんま大声出すと、チビどもが心配するぜ、お兄ちゃん?」
「てめぇ……からかってやがんのかァ?」
「まさか。家族を大事にできるやつを尊敬してんだ、俺は」
 飄々とつかみどころがなかった男が不意に浮かべた静かな笑みは、どこか自嘲の色が滲んで見えた。
「冨岡に手を出さないってんなら、あんたに文句はねぇよ。ただ、あんたらがあっちの木立の奥に向かってんなら、ちょっと控えてもらいてぇけどな。冨岡をヒロインにした映画のロケ中なもんでよ、悪いが外野は立ち入り禁止だ」
「は……? え、映画のヒロイン……?」
 ついぽかんとしてしまった実弥の驚愕をどうとらえたのか、男は苦笑しながら頭を掻いている。
「あ~、冨岡は乗り気じゃなかったんだが、チビッ子親衛隊がなぁ……冨岡と一緒に映画出演ってのに派手に舞い上がっちまってさ。ま、そういうわけで今はちっと取り込み中だ。悪いがほかに行ってもらえるか?」
 苦笑する男の声はやけにやさしく聞こえて、実弥は知らず眉間にしわを寄せた。
 やっぱりこいつと付き合ってるんだろうかと考えては、胸の奥がズキンズキンと痛む自分にいらだってしかたがない。こんなことは初めてで、自分で自分の感情がよくわからなかった。

「に、兄ちゃんっ! どうしたんだよ、なんかこいつに言われたのか!?」

 玄弥の声に我に返って振り向けば、寿美を抱えた玄弥を筆頭に、就也たちが走り寄ってきていた。
 先ほどまで男に熱を上げていたはずのことと貞子まで、すっかり心配げな顔をしている。一瞬言葉を失って答えられなかった実弥になにを思ったのか、玄弥たちが男を睨みつけた。
「おまえ、兄ちゃんになんかしたのかっ!?」
「おいおい、言いがかりだって。今、あっちで禰豆子や炭治郎が俺のツレと映画撮ってるから、あっちは立ち入り禁止だって教えてただけだよ」
 男が言った途端に、就也たちがワッと声を上げた。
「えっ!? 竈門が映画に出んのっ!?」
「すげぇ! テレビとかも出んのかな!?」
「実弥兄ちゃんっ、ことも禰豆子ちゃんとこ行きたいよぉ」
「貞子も禰豆子ちゃんが映画するの見たいよぉ。ね、行っちゃ駄目?」
 わぁわぁと大騒ぎになったチビッ子たちには、さすがに飄々とした態度もくずれ、男が目を白黒とさせた。
「どこのチビッ子も変わんねぇなぁ……おいっ、いっぺんにしゃべんなって! べつに禰豆子たちが役者だとかいうわけじゃねぇからっ。ヒロインと一緒に遊ぶエキストラだ。セリフだってねぇよ。そもそも映画って言っても、中学生のコンクール用の自主制作だしな。映画館でやるようなもんじゃないんだぞ?」
「それでもすげぇよ。炭治郎と禰豆子がいるなら、錆兎や真菰も一緒なのか?」
 玄弥も就也たち同様に顔を輝かせて言う。
 せっかくのゴールデンウィークだというのに、玄弥たちを家族旅行に連れて行ってやれるわけでもないことを、実弥はふと思い出した。
 もしかしたらこれはチャンスかもしれない。連休明けに学校でクラスメートたちに自慢できる思い出を、玄弥たちにも作ってやれるんじゃないだろうか。いや、あの子にまた逢えるとか、そんなことは考えちゃいないけれど。
「おい、てめぇ……」
「あん? あぁ、自己紹介してなかったな。宇髄だ。キメ学三年。冨岡と煉獄って金髪は同クラだ」
「……宇髄さんよォ、その、映画の撮影ってのは見てちゃまずいのかァ。静かにさせっからよ、こいつらに見せてやりてぇんだが……」
 実弥の言葉に、バッとそろって顔を宇髄に向けた就也たちの目が輝いていた。
 せめてなにかひとつでもいいから、思い出になることを。実弥自身が与えてやれるものでなくていいから、玄弥たちが楽しいと思ってくれるものを。自分が見たいわけではない。断じてない。
 思いながら宇髄の言葉を待てば、宇髄は小さく苦笑した。
 スマホを取り出しなにやら操作していたが、やがてニヤリと笑い「OKだってよ」と、軽くウィンクしてくる。

 うわ、チャレェ……。

 思わず顔をしかめた理由に感づいたのか、宇髄は少しばかりムッと眉を寄せたが、それも一瞬だ。
 キャアキャアと騒がしくはしゃぐ就也たちを、近くまで行ったら静かにしろよと笑いながらうながした宇髄は、玄弥から寿美を受け取り歩き出した実弥に向かい、小さな声で言った。
「金で動いた馬鹿どもが、今、冨岡を探してる。まさかこんなとこまで来るこたぁないと思うけどよ、万が一のときは頼りにしてるぜ、一匹狼の不死川さんよ」
「……玄弥たちもいるんだ、守るに決まってんだろうがァ」
 目に焼き付いた、少し伏せられた苦しそうな横顔を思い出して、つい寿美を抱く腕に力がこもった。

「にいちゃ、たいよっ」
「お、おぉ、悪ぃっ!」