新大陸の短文集
『特異日と満月』
―今日って『晴れの特異日』なんだって。ロゼルタさんが言ってた。
向こうから『外に出よう』と誘われたので理由を尋ねてみるとそう答えられた。他の日に比べて晴れることが多い日や雨になることが多い日のことを『特異日』と言うらしい。思い返してみれば、今日という日付に雨に降られた記憶があまり無いような気がした。窓枠越しに覗いた空は雲一つなく、雨が降る様子は確かに無さそうだ。
―それと、今夜は満月らしいよ。だからさ。
にこにこと笑いながらアイツは続けた。
―月を飲んでみない?
ワイングラスとワインを手にしながら出された提案に、その意図を察して「それはいいな」と返すと、じゃあ準備するね、とアイツは支度を始めた。満月に飲むワインは美味しいんだって、なんて付け加えながら。
作品名:新大陸の短文集 作家名: