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第一王女の心の内

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(それにしても――まさか『あの』サーラが、私に向かってはっきりと意見を言う日がくるとは)
 部屋に一人残ったレオポルディーネは、先程末の妹が自分に対して告げた台詞を改めて思い返した。
『そろそろ夫をB国の婿ではなく、名前で呼んで下さいませんか』
 ――B国がこの国に、もっとも賢い青年ではなく子犬を贈ったことは間違いない。
 その事実をレオポルディーネは部下からの報告で把握していた。その報告が誤りだとは思わない。
 あの青年――ナランバヤルはB国の人間だが、B国から婿入りしたサーラの夫ではない。
 おっとりした末の妹が替え玉を用意して王宮を訪れたことも驚いたけれど、サーラがサーラなりに戦争を回避しようとつとめていたことが誇らしく、少しだけ寂しい。
 レオポルディーネはA国の第一王女であり、正妻の長子。対してサーラは妾の末姫で、王宮で暮らしていた頃はこちらを遠巻きに見るばかりで自分から近づいてくることはまずなかった。
 第二王女や第三王女が『サーラに声を掛けてもそそくさと逃げられてしまう』と嘆いていたことを思い出す。
(家族という繋がりは、難しいものね)
 意見の食い違いから、公の場でもレオポルディーネは父親である国王と碌に会話をしなくなった。
 第二王女や第三王女は、そんな自分を案じて結婚もせずにずっと王宮へ留まっている(サラディーンへの気持ちもあるだろうが、それは半分後付けだろう)。
 ――サーラは、結局最後まで『お芝居』の真相をレオポルディーナに明かさなかった。そのことが、レオポルディーナは少しだけ寂しい。
 しかし、しんみりと寂しがっている暇はないのだ。
 サーラは、いくらあの父王でも子猫を最も美しい娘の身代わりにB国へ嫁がせたりはしないと言っていたが、嘆かわしいことにあの父王はそれをしてしまったのである。こちらもレオポルディーネの優秀な部下が確認を取ったので間違いない。
 B国がA国に最も賢い青年ではなく子犬を送り届けたとなれば、少なくとも今回の一件は痛み分けに持ち込めるかもしれないが、近い内に戦争が起こる懸念は強くなる。
(それでも、あの子が自分で考えて戦争を回避しようとしているのだから――それを無駄にはしたくないわね)
 そして、そんな異母妹の努力に応えることが、姉である自分の役目であるとレオポルディーネは思っている。
 窓から見える街を眺め、その美しさと、刻一刻と近づく脅威を感じつつ、レオポルディーネはそっと目を閉じた。
 
「――私が守らねば」

 《終わり》
背負う覚悟を持つ者
作品名:第一王女の心の内 作家名:川谷圭