この世界に救済を
「シスター・クレア」。
村人からはシスターと呼ばれ、親しまれている。
「シスター!綺麗なお花が咲いてるよ!」
村に住んでいる少年はクレアに駆け寄って、花畑を指差す。
クレアは微笑みを浮かべながら「綺麗ですね」と言い、少年を撫でる。
クレアの幸せそうな笑顔を見た少年は、花畑の方へ走って行き、しばらくしてまたクレアの元に戻った。
その手には、花束が握られていた。
「シスターにあげる!」
満面の笑みでシスターに差し出すと、クレアは屈んで少年と目線を合わせた。
「ありがとうございます。」
花束を受け取り、教会に戻って花を花瓶にいける。
村の教会は小さく、シスターもクレアしかいない。
クレアは一人、神に祈りを捧げる。
朝起きると、村は少し騒がしかった。
教会で「原始の神」へ祈りを捧げてから外に出る。
外には、汚れ一つない純白の服を着た人が何人か立っていた。
所々に施された金色の刺繍、そして胸についている透明なダイヤモンドを見て、クレアは勢いよくその場に跪いた。
「神の代行者、大神官様にご挨拶申し上げます。」
普段、このような辺境の地に来るはずのない大司教がいたのだ。
「この村には一人しかシスターがいないのか?」
大神官の後ろにいる、神官と思わしき人物が問いかける。
「はい。この村のシスターは私だけでございます。」
震えそうになる声を抑えて、神官に告げる。
大神官はクレアを数秒間じっと見つめていた。
クレアが、なぜこんなところにきたのか尋ねようと口を開くと、クレアが話す前に大神官が一言言った。
「ついてきてください。」
そしてクレアは豪華な馬車に乗せられ、どこかに連れて行かれた。
悲しいことに、クレアが乗せられた馬車は神官と同じ馬車だった上に、乗り心地はいいものではなかった。
深くフードを被っているため、神官の顔は見えなかったが、フードからはみ出た髪がベージュだったことや、
胸元についている宝石の色が青っぽい色だったことから、上位の神官だろうと考えられた。
馬車に揺られて数十分ほど立ってから、一緒に乗っていた神官が口を開く。
「今から中央都市レンゼルへ向かいます。」
中央都市レンゼル。貿易の中心で、第一の教会がある場所だ。
「なぜ、レンゼルへ…?」
そう聞いても、神官は答えようとしなかった。
クレアはもう少し詳しいことを聞こうとしたが、これ以上聞いても何も教えてくれなさそうだっただめ、何も言わずただ目を伏せた。
ーーー次回の更新をお待ち下さい。