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赤い糸の代わりに

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菫色の瞳が、じっとこちらを見つめている。
「なんやの、坊」
 何かあるならはっきり言え、と催促すれば、クッションを抱えていた司がおずおずと口を開き……かけて、閉じた。
「なんやねん」
 言わんのなら知らん、と手元に視線を戻す。忙しくて、司一人に構っている暇などないのだ。
「これはHiMERUはんやろ」
 桜の造花がついたラッピングを解けば、品の良いストールが出てきた。薄いグレーのそれは、端の方が薄い桜色になっている。丁度いい、とふわりとそれを纏って次の品に手を伸ばす。
「…これはラブはん」
 これは、とひとつずつ綺麗に包装された品々を解いていく。同じユニットのメンバー、一緒に仕事をした人、同じ事務所、寮の同室、友達。テーブルから転げ落ちんばかりに並ぶそれらは、今日の誕生日会で彼らからもらったプレゼントだった。
 ひとつひとつ眺めては大きな紙袋に仕舞っていく。洋服やアクセサリー、日用品から食べ物まで。くれた人の顔が思い浮かぶような、そんな品々。
「これで最後やな」
 ふふっと笑いながら片付けたのは、ニキからもらったご当地インスタントラーメン食べ比べセット、計6食。【一緒に食べ比べするっすよ~!】と添えられたメモに、何割食べられてしまうのだろうかと笑ってしまった。わしが食べる分はあるんやろか。

 ふう、と後ろに反り返ったところで漸く、部屋の隅っこでいじけていた司がこちらにやってきた。
「……こはくん、」
 椅子に座っているこはくにもたれるように抱き着いてきた司の背を擦る。
「どしたん、坊」
 あやすようにとんとん、と背中を叩いてやれば、すんすんと鼻を啜る音がする。
 大方他の人に囲まれているこはくを見て嫉妬したのだろう。そう言えば、誕生日会では一言も話していなかったのではないだろうか。
「……朱桜の兄はん」
 なあ、と顔を覗きこめば、潤んだ菫と視線が交わる。
「わしが盗られるっち思うたん?……ほんま可愛いお人やね」
「こはくんの、意地悪」
 これ、嫌です。そう言った司は肩にかけていたストールを剥ぎ取る。
「意地悪もしたくなるやろ。だってまだ、坊から何も貰ってへん」
 言え、とその桜色の唇を親指でなぞる。ふるりと震えたそこは、漸くその言葉を紡ぎだした。
「こはくん、……お誕生日、おめでとうございます」
「ありがとうな」
 よくできましたと唇を重ねる。柔くて、甘い。
 もう少し、もう一度。そうやって何度も口付けを繰り返して、シャツの裾から手を忍ばせようとした時だった。
「っん、……まってください、」
 掴まれた手首に怪訝な顔をしていると、司はジャケットのポッケから小さな箱を取り出した。
 質素な箱から出てきたのはベルベットの巾着。ころん、と落ちる様に司の掌に転がされた二つの丸。じっとを眺めていると、ひとつはこはくの指に嵌められた。
「お祝い、です」
 ほんのりと赤らんだ顔の、愛おしいこと。金色のそれと赤い顔を交互に見つめていると、余ったひとつがこはくの掌に載せられた。
「私にも、嵌めていただけますか」
 そっと差し出された手を取って、司がそうしてくれたように、小指に指輪を嵌めてやる。
「指、ひとつ違うんやないん?」
 こつん、と額を合わせれば、熱でもあるのかと思うくらい熱い。
「それはまた、来年」
 約束です、と絡めた小指にきらりと光るピンキーリング。聞けば、内側に桜の模様が彫られているらしい。
「マーキング、っちわけやね」
「悪いですか」
 むすりと尖った唇を啄んで、ええんちゃう? と笑った。
作品名:赤い糸の代わりに 作家名:志㮈。