D.C.III.R.E
Prologue:Wheel of fortune どんな未来を描いても
例えば、蝶の羽ばたき一つ。その程度の些細なことで、未来が変わることもある。
<系統樹の径>。
それはほんの些細な出来事で幾重もの枝に分岐する。
そんな中でも、一人数奇な人生を歩む者がいる。彼は普通の魔法使いだったのだが、たった一つの間違いで全てを失い、後に稀代の魔術師とまで呼ばれるようになる。
その者の運命も些細な出来事の重なりで、瞬間瞬間があると言えよう。
その運命がまるでボタンの掛け違いみたいに少しずれたら、どうなっていたのだろう。
◆ ◆ ◆
「じゃあ、行ってくる」
大きく枝を伸ばし、優雅に花弁を開かせる桜の根元、俺は最愛の妻に暫しの別れを告げ、扉を開ける。
扉を開けた先にあったのは一本の大木だった。桃色の花を雄弁に輝かせているそれは、一言で表すならば満開。そこにあったのは桜の木だった。
だが桜の木が聳え立つ部分以外に陸地がない。地平線の彼方、そこに広がるのは一面の水面だった。
そして無数に浮かぶ鏡の数々。そこには何が映されているというわけではないのだが、無数の鏡が浮かび続けている。
また頭上にも足元と同じように水面が広がっていた。これではここが水中なのか地上なのかがわからない。
そんな不思議な空間だ。
俺はここでやらねばいけないことがあった。
作品名:D.C.III.R.E 作家名:無未河 大智/TTjr