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新しい世界

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   新しい世界
         作 タンポポ



       0

――殺しの起源なんて無いんだよ。いくら対象が未成年だからといって、殺人の事を言っ  
  ているんだろう? ならば年齢がどうだろうと一緒さ。――岡田
――そう。殺人だからこそ、それは簡単な事ではない。全てを一貫して導けるほど容易ではないの。――鈴木

――感情で全て支配されるんだよ。事の善悪はもう問題じゃない。――岡田
――全ての少年犯罪がそうではない。――鈴木

――少年犯罪自体がそうじゃないか、未成熟な心では事の善悪どころか、その重大さを理解する事さえ困難だ。それは家庭環境に起因する事だよ。――岡田

――環境ではない。少年犯罪は環境から生まれるものではないわ。――鈴木

――じゃあ何から生まれると?――岡田

――少年犯罪は、悲しい心が生み出すのよ。――鈴木

「少年犯罪は…、悲しい心が…生み出す……」

――悲しい心とは、一体何の事ですか?――七氏

「………」

――悲しさの事です。七氏も理解出来るでしょう? 経験した事はあるはず――鈴木

「悲しさの……七氏も、理解出来るでしょう…経験した事……」

――だから、少年犯罪が起こるのですか?――七氏


――悲しさで人が死んでいたら、それこそこの世は地獄絵図だ。――岡田

――そうではないわ。もちろん、悲しさだけで全ての少年犯罪が行われるわけではない、
  でも、そういう犯罪も事実あるの。とても悲しい事。まだ幼い心たちは、悲しさに人を殺すのではなく、悲しさに、殺されてしまうの。――鈴木

「………」

――鈴木先生にも、経験が?――七氏

――無いとは言わないわ。――鈴木

「無いとは言わない?」

――そうだとは思わんがね。事実少年犯罪自体が未成熟のために、法で思うように裁けないじゃないか。未成熟な心は未成熟な結論を出してしまうんだよ、言い方を替えれば、彼らはまだ感情のはけ口を知らない。事実少年法で酒さえ飲めない身の上なんだ。結論を急ぐことも然り、感情を持て余す事も然り、全てはその場に存在している生活環境から作られた結果だ。――岡田

「………」

――否定はしない。けど、それだけで人を殺す事には至らない。心が未成熟と言っても、彼らは完全な子供というわけではないの。全ての犯罪がただ子供だったという理屈ではないのよ。中には、大切なその部分だけをまだ理解出来てなかった、子供もいる。
  ――鈴木

――子供じゃないか。結局、それは子供なんだろ?――岡田

「………」

――ええ、子供よ。だからこそ、少年犯罪は大人のそれとは全く違うの。人を殺してしまったその子は、その重大さをすでに理解している。――鈴木

「………」

――理解していて、犯罪に至ってしまうの。だから後悔も出来る。その後で涙を流す事もできるの。――鈴木

――何が言いたいんだ?岡田

「そう…君は、何が言いたい……」

――その涙を流しているのは、大人ではなく、子供だという事よ。――鈴木

――そんな事はわかっているさ、だから少年犯罪というんだよ。――岡田

――いいえ、わかっていないはず。子供が犯す犯罪を少年犯罪と呼ぶのではないの。子供だから、ただそれを少年犯罪というべきではない。――鈴木

「………」

――独自の理論でも持っているのか? 無駄な事だよ、悲しい事だが未成熟な心が犯す犯罪を世の中では少年犯罪と呼び、その為に特殊な少年法という物が制定されたなんだ。生活環境が大きく影響する時期だ、それが犯罪を感化する。何が悪いとも大きく言えない、法でがんじがらめにする事さえ出来ないんだ。未来があるからね、子供はまだスタートラインに立ったばかりなんだ、はっきり言ってどうする事も出来ない。つまりは子供の犯す犯罪の事をそう呼ぶんだよ。――岡田

――少年犯罪は、未成熟な判断だけが引き起こすものではないわ。この際、法も関係ない。肝心なのは、子供がその結果を理解しているという事よ。――鈴木

――子供が自分の犯した殺人という大きな罪を完璧に理解出来ているとは思えないがな。状況と経緯に理由を重ね合わせ答えを出しているに過ぎないんじゃないか? だって、やったのはまだ人間として不完全な、子供じゃないか。絶対に本当の意味では理解出来ていないんだよ。――岡田

――それを、少年犯罪と呼ぶの。――鈴木


   作 タンポポ


       1

環境、人格、関係、社会、問題、その他多くの事柄がイコールするものが少年犯罪である。一口にそう言われてしまっても、犯罪なのだから同じである。全ての事柄はその場を形成する元素に過ぎない。犯罪を犯すのは元素ではない、その元素を吸収する媒体、つまり個人なのだ。
個人という答えがありながら尚且つ強い納得が得られない、それが少年犯罪である。
それが殺人ならば尚更の事。――そう理解している人間は、どうやらこの少年犯罪という分野においては相応(ふさわ)しくないらしい。堀未央奈(ほりみおな)は毎夜のようにそう思い、また愚痴をこぼすのであった。
堀未央奈は神奈川県警に所属している刑事組織少年犯罪対策課の係長である。専門は殺人、それも少年犯罪を専門とする身の上であった。
「話にならないっつうの、その辺のガキ捕まえてきて、取り調べしてんのと、何が違うの? 違わないっしょう~?」
 堀は舌を打つ。すでに何杯目かわからないグラスは、ずっと握り締められたままであった。
「情報提供者が何だって~のよっ、何が来たって、要は肝心の犯人がガキじゃない、私に何しろって~のよったくもうぉ!」
「まあまあ、未央奈はよくやってるよ」
 新内は肩を竦(すく)めて笑った。
「ま、今日は久しぶりに肩の荷を下ろせる日なんだから、ね? わざわざお酒と愚痴恋しさに神奈川くんだりから出向いて来たんだから、もっと言いな。聞いたげる」
 週末の夜、堀はこうして地元神奈川を離れる。無論、刑事という役目を忘れる為にそうするのである。しかし、本意でいうならば、そうでもしない限り酒になど本当の意味で酔えはしないというのが持論でもあった。
 神奈川を離れ求める赤提灯(あかちょうちん)は東京にあった。堀は毎度、週末になると東京のここ四ツ谷にある〈自惚れビーチ〉という居酒屋に参上する。そこには必ず、決まって堀と同席する者がいた。
 その女の名前を新内眞衣(しんうちまい)といった。――この女である。
「娘は元気にしてるの?」
 新内はグラスを両手で抱え、すでに赤ら顔の堀に横眼を向ける。
「旦那さんに逃げられた後、娘とも引きはがされたんじゃあこれからの愚痴の趣旨が違ってきちゃうからねぇ~、そこだけは投げやりになりなさんなよ?」
「わあってるって……」
 堀は回りずらくなった舌を無理やりに回した。
堀と新内は同級であり、それ以来の親友でもある。今年揃って三十三を迎えた二人には同職という肩書もあった。――堀は大学に在学中、私は将来刑事になってやる、と実家を空き巣にやられた事を切っ掛けに、夢を実現させた。尚、新内も己が少女時代から現職の警察官であった父を慕い、見事大学卒業と共に警察官になるという長年の夢を実現させたのである。
作品名:新しい世界 作家名:タンポポ