出席番号2番くんの話
「オレの高校の制服も、ボタンじゃなくてファスナーの学ランだったんだ」
とは父の言葉で、母に見せてもらった高校時代の学ラン姿の父はオレとよく似ていた。いや、オレが父に似たというべきか。目元は母に似ていると言われることもあるけど。
「出席番号、1番じゃなくて2番なのね。名前の順なら、相田なんて名字は1番になることが多いんだけど」
保護者向けの資料に目を通した母が言う。
学生時代の母は、名前順の出席番号は常に1番だったらしい。オレの「相田」という名字は母方の名字だ。うちは父が母の家に婿養子に入っている。父は、母と高校で出会ったときには既に両親がおらず、祖父母と暮らしていたらしい。母は母で相田家の一人娘だし、両家で話し合ってこの形を取ったのだとか。ちなみに、母の父、俺の母方の祖父はスポーツジムを経営している。
「部活はやっぱバスケ部に入るのか?」
気だるそうな声の祖父にオレは「もちろん!」と即答する。
「バスケ以外ありえないよ。だって、オレのじいちゃんは元プロバスケ選手で、父さんだって高校では全国優勝してるんだ。オレだって頑張れば、二人みたいなすごいバスケ選手になれるはずだよ」
そうかそうか、と満更でもない顔の祖父の隣で、母が少し複雑そうな顔をする。
高校時代の怪我さえなければ、父さんだってきっとプロの選手になれた。母はそう思ってるのかもしれない。父は高校生の時にバスケの試合で膝を故障している。アメリカで療養して普通にスポーツを楽しめるようには戻ったが、さすがにプロは断念したらしい。そんな父の様子を、高校時代、同じバスケ部でカントク(マネージャーじゃなくて!)をしていた母はずっと見てきた。父がアメリカにいる間も、ずっとマメに連絡を取っていたらしい。
「そろそろ出なさい。初日から遅刻するんじゃないわよ。私たちも後から行くから」
母に急かされて、オレは玄関へ向かう。両親は後から入学式に揃って出席してくれる予定だ。
「分かった。また後でね。行ってきます!」
元気よく答えて、家を飛び出す。
今日から新しい顔ぶれとの学校生活が始まる。どんな奴と出会えるのか楽しみだ。
作品名:出席番号2番くんの話 作家名:cozy