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アイス

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 包装のフィルムを剥がして、棒つきアイスを取り出し口に運ぶ。
 ソーダ味のアイスの色は、透けるような水色。隣に並ぶ想い人の髪と同じ色だ。
「本当に良いんですか? 誕生日プレゼントがアイスだけで」
「うん! 私このアイスが好きなの!」
 シャクリと音を立てて口に入れると、ひんやりとした甘さが広がる。
 一人でもこのアイスは美味しいけれど、好きな人と並んで同じ物を食べていると思うと、いつもよりもずっと美味しい。でも。
「テツ君はバニラシェイクじゃなくて良かったの?
 いつも火神んといる時はそっち食べてるよね」
 付き合わせちゃってたら悪いなと思ったけど、テツ君は首を振って、
「いいんです。
 帝光中の友達と食べるなら、ボクもこっちのほうが好きなんですよ。
 楽しかった頃の思い出と結びついているので、皆と和解するまでは食べにくかったんですけど」
 シャクリと音を立てて、テツ君がアイスを齧る。
 男の子だけど、私のと違わないくらい控えめな一口。帝光中にいた頃だったら、そんな彼の隣で、私の幼馴染が半分くらい一気に齧り取ってた。
「そっか。そうだね。私も、皆と食べるアイスが好きだった」
 男子バスケ部に入ってしばらくは、男子部員に混じってアイスを食べることができなかった。でも、三軍から一軍に上がってきたテツ君がアイスの当たり棒をくれた時から、皆の輪に入っていくことができた。私も仲間に混ぜてもらえるんだと思えたから。その時もらったアイスの当たり棒は、今でも大切にとってある。
「私ね。あの時テツ君がアイスくれたの、ホントに嬉しかったんだよ」
 男子部員にも女子マネージャーにも。一軍にも、三軍にも。相棒のエースにも、素行の悪い元レギュラーにさえ、テツ君は一貫して態度を崩さなかった。誰に対しても誠実で丁寧で、だけど自分の主張ははっきりと口にする。
 この人の特別になりたいと願いながらも、この人の仲間に対して分け隔てないところが好きだ。
「これからも私と友達でいてね、テツ君」
「はい。もちろんです」
「できればカノジョがいいんだけど」
「そうですか」
 可愛い童顔をキョトンとさせて、テツ君は今日もこっち方面ではつれない。
 それでもいい。こうして二人で思い出のアイスを食べられるだけで、今は充分幸せだから。
作品名:アイス 作家名:pal