友達の好きな人
周りの男子と比べたら、自分は色恋ごとに関心が薄いほうだと思う。
多分、男一人、女きょうだいに挟まれているせいだろう。現実を知りすぎていて、みんなほど女子に幻想を持てないのだ。
それでも関心が薄いだけで無いわけではないし、友達が恋愛していれば応援したいと思うくらいの気持ちはある。その友達が、中学から仲が良い奴なら尚更だ。
「あのさ、相田って今、木吉とどうなってんの?」
「え? 急にどうしたの、伊月君」
相田は驚いた顔でオレを見上げる。
普段、オレからこういう話を振ることなんてないから当然かもしれない。
「いや、なんかうちの姉が木吉のこと気になってるみたいで。
だからどうって話じゃないんだけど、なんとなく」
うちの姉が木吉を気に入ってたのは嘘じゃない。ただ、気になってる理由は別にある。
中学生の頃からずっと日向が相田を好きでいることを、相田は気づいているんだろうか。
「へえ、そうなの。実はモテるもんね、鉄平。私が付き合ってた男だし」
ニンマリと満更でもない笑みを見せる。
残念だったな、姉さん。元カノにはライバルと思われてないみたいだぞ。……じゃなくて。
「喧嘩別れとかじゃないんだろ。今でも下の名前で呼び合ってるし。
いつかはヨリ戻すつもりなのか? ……いや、それならそれで姉に言っておこうかなと思って」
踏み込んだ質問をしてるのは分かってるから、突っ込まれる前に予防線を張る。姉を口実に使うのは気が引けないでもないが、学年2位の頭脳を相手に余計なことを勘づかれないようにするには、極力嘘がないほうがいい。
「そうねえ。喧嘩別れとかじゃないけど。
今はお互い今後どうするかとか考えてないわ。バスケに集中、ってカンジ」
ある程度は予想していた答えが返ってくる。
そりゃそうだろう。日向と木吉が表立って相田を取り合ったりしないのも、今はお互いバスケが一番だからだ。立場は違えど、相田もそれは同じ。色恋沙汰でチームの輪を乱してる場合じゃない。
「そうだよな。分かった。
とりあえず、姉には木吉は諦めてくれって言っておくよ。今はバスケに集中させたいし、その前にアメリカで療養もしないといけないからって」
「ありがと。そうしておいて」
にっこりとした笑みを返す相田を見て、ああ、やっぱりまだ木吉が好きなのかなと、ぼんやり思う。きっとそんな彼女の気持ちに日向も気づいていて、木吉がアメリカにいる間に抜け駆けするなんてことが、あいつには出来ないんだ。
日向の恋が実ってほしいと思う。だけど、相田の気持ちも大事にしたい。
二人とも中学からの友達だから。
そして、高校で新しく友達になった木吉にもやっぱり笑っていてほしい。
自分の中でたくさんの気持ちが絡まりあって考えるほどにこんがらがるから、やっぱりオレは恋愛事はまだいいかな、と今日も思うのだ。