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女の勘

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 どうしても赤司に勝ちたい。中学時代はその一心でバスケの練習に打ち込んでいた。
 勝つためなら勉強時間を割いて練習だってしたし、ラッキーアイテムで運の補正もした。頼れるものにはすべて頼った。無論、選手のデータを分析しているマネージャーにも。
 その日もオレはマネージャーの桃井に、自分のシュートフォームの修正点について意見をもらっていた。そして、会話のついでに何気なく尋ねてみた。
「オレが赤司に勝つには何が必要だと思う。率直な意見を聞かせてほしいのだよ」
 びっしりとデータを書き込んだノートを捲っていた桃井の手が止まる。桃井はオレを見上げると、言いにくそうに眉根を寄せた。
「今のミドリンじゃ、ちょっと難しいと思う」
「そうか。なら、改善点を……」
「違う。そうじゃないの。ミドリンの努力が足りないんじゃない」
 桃井は一方的に会話を区切って、黄瀬と青峰がいるほうに目を向ける。
「きーちゃんのこと、どう思う?」
 人の質問を遮っておいて、まったく関係のない質問をしてくる。
「どうとは、どういう意味なのだよ」
「きーちゃんが今、大ちゃ……青峰君に勝てると思う?」
「それは、難しいだろうな」
「ね。人のことなら良く分かるでしょ? おんなじことだよ」
 そう言って、桃井は困ったような目でオレを見る。
「抽象的でわからん。もっとはっきり言ってくれ」
 桃井は眉尻を下げ、ふうと溜息を吐いた。
「ミドリンは赤司君のこと誰より尊敬してるでしょ?」
「それは、まあ、そうだな」
「で、きーちゃんは青峰君に憧れてる。だから、たとえ技術が追い付いても、気持ちで勝てない」
 と、思う。言葉を和らげるためか、桃井はそう付け足す。けれど、本心ではその意見に自信を持っているのだろう。チームメイトだ。そのくらいは分かる。
「きーちゃんは青峰君が負けるところなんて見たくないの。青峰君に勝ちたい気持ちより、そっちが上回ってる。
 ミドリンはどう? 赤司君が負けるところなんて、見たくないんじゃないの?」
 痛いところを突かれている、と感じる。
 これが桃井の言う「女の勘」なのか。見透かされたくなかった本音だ。
「確かに、オレは赤司が負けるところなど見たくないのだよ。……オレ以外の男に負けるところはな」
 それが、その時に示せる最大限の矜持だった。
「赤司を最初に負かすのはオレだ。オレが赤司に敗北を教えてやるのだよ」
 嘘を言ったつもりはない。自信が無かったわけでもない。けれど、結果は――。
「うん。頑張ってね」
 そう言って笑顔を作ったあの時の桃井には、もう既に未来の結果が見えていたのかもしれない。
作品名:女の勘 作家名:pal