舞い落ちる雪
灰色の雲の合間から、綿毛のような白が絶え間なく降ってくる。
オレはその雪に両手を差し伸べた。
差し伸べられた両手に雪はたどり着き、いくつもの結晶が手の平に受け止められた。
いくつもいくつも。
でも。
片方の雪はすぐに溶けてなくなるのに、もう片方はいつまでも結晶の形を残したまま。
いつまでも、いつまでも。
やがてその鋼の色が真っ白な雪に覆われて見えなくなってしまうまで。
「兄さん」
背後から、アルの声。
そろそろ行こうと、オレを促す。
風邪ひくよ。と、いつもの優しい声で。
その身体もまた、オレの右手と同じように雪の白で埋め尽くされていた。
オレは右腕を左の手で抱いた。
既に熱を奪われた左手は冷たい。でも、初めから熱を持たない右腕はもっと冷たい。
それよりもずっと冷たいのが、アルの体。
肉体を持たないアルの。
オレは、ぎゅっと、かじかんだ左手を握り締めた。
アルの身体にもう一度熱を与えてやりたい。
もう一度、アルの温もりを感じたい。
何をしてでも、叶えなければならない自分達の目的。
「兄さん」
アルがオレを呼ぶ。
オレは振り返る。
そして一歩一歩、歩みだす。アルと共に。
たとえゴールがどれほど遠かろうが、オレはアルと一緒なら立ち止まったりはしない。絶対に。