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きょうかい

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悪い大人だな、と自嘲した。
膝に乗せた子供に欲情している。
やわらかい体温と甘い汗のにおい。
子供から良い匂いがするのは無条件に愛されるためだと良く言うけれど、
きっとこの子供はそれが強いに違いない。
近寄る前は恐怖の対象だけれど、一度こうやって腕の中に埋めてしまえば放し難いくらいに、狂おしいくらいに甘いにおい。
愛されることに飢えた体に触れた者だけが吸う事を許された。

それは確かに愛されるためのものだ。
けれど、意味が違う。

まだ出来あがっていない柔らかい関節に触れる。
くすぐったそうにぴくりと震える肩に首を埋めながら膝裏を掌でなでてやると耐えられなかったのか子供はくすくすと笑いだした。

「いざや、こそばい」
「ふふ、こそばくしてるんだよ」
「やあだ」


Tシャツの裾から手を入れて背中をなでる。
滑らかな子供の肌。この皮の下で脈打つ赤く瑞々しい筋肉。
温かな血が流れる感触。
やだやだと笑いながら身をよじる子供から、いっそう強く香りが立ち上る。

それはどこか性的でいやらしいようにも思えた。

「しずちゃん、あそぼっか」

自分に背を向けて座らせていた子供を抱き上げて、向かい合わせにもういちど膝に乗せる。 見上げる瞳と、色素の少し薄い睫毛。
頬に生える産毛をなでてそのまま両手で頬をすくい上げると額を合わせた。
抵抗はない。細い腕が首に伸ばされて、そのまま頭を抱き込まれた。
猫のように擦りつけられる額、鼻先を甘噛みしてやるとまた強く甘い気配がした。







作品名:きょうかい 作家名:佐藤