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手放しでフェイク

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問題児クラス3年Z組は、その出席率においてのみ輝かしい功績を持つ。
銀八こと、坂田銀時の適当な担任っぷりが許されているのも、ひとえにこの功績があってのことだ。

「問題児は、まず、毎日学校に来させる。まともな生活をさせる。ねっ、そうでしょ、校長。まずスタートラインにたたなくっちゃ」
お説教に呼び出された校長室で、銀時はそう主張した。
校長の触覚を力一杯引っ張りながら。

「わかった、わかったから!その代わり出席率が下がったら、減給だからね!ちょ、取れる、やめて!やめてェェ!!」

この薄給からどう差し引くっつーのよ。
銀時はぶちぶちと不満を垂れ流しながら校長室を退出し、引きちぎった触覚を投げ捨てた。

これ以上手取りが減ると、生きがいであり日課である『1日1パフェ』の実行が苦しくなってしまいそうだ。
ちなみに、平日は日替わりパフェ、週末はスペシャルデコレートVer.デラックスパフェと決めている。

だから、銀時は手のかかる生徒たちを何としてでも学校に来させなければならなかった。



そうはいっても実際のところ、3Zの生徒たちは大方、担任である銀時が何を言わなくても学校に来る。
問題なのは異常にテンションの高いその行動であって、不良だとかそういった言葉とは無縁なのだ。

つまり銀時は特に、生徒たちが『まともな生活をする』ために手を尽くしているわけでもなんでもない。
ただ生徒たちと同じように毎日学校に行き、誰が聴いているのかもわからない授業をするだけでいい。
そして適当に校長の目をごまかしていればいい。
…はずだった。

揃いも揃った問題児の中で、飛びぬけて厄介なヤツがいる。
そいつのおかげで人生のささやかな楽しみ(1日1パフェ)が存続の危機にあるのだ。



「で、それがお前ね」
屋上に座り込んでフェンスにもたれ、煙草をくゆらせながら銀時は、目の前に立つ高杉を指差した。
「………」

授業が終わり、迎えが来るまで時間が空いたので、見回りの教師に詮索されぬようにと高杉は屋上に足を運んだ。
そこには先客がおり、相手が相手だったために高杉は舌打ちをして屋内に戻ろうとした。
すると、気づいた先客がすかさず呼びつけ、唐突に語りだしたのだ。

突っ込みどころが多すぎて、話をさえぎることなく律儀に最後まで聞いてしまった高杉は、何ともいい難い不愉快な心持がした。

「とりあえず、指を差すのをやめろ」
「いぎゃ!」

寝ぼけたような担任の面構えを見つめると一気に苛立ち、真っ直ぐ此方を向く指を握りボキッと逆間接にひねる。

「そして、完全に手前にだけは何かを指導される筋合いはねーよ」

教師業も適当、校内で堂々と喫煙、あまつさえ生徒の目の前で。おまけに指導の動機が全力で甘味ときた。
高杉はいまだかつてこんな教師を見たことが無かった。
ここまで適当な教師を雇う学校が、何故成り立っているのか不思議だ。

現に銀時は、すでに高杉から興味を失ったようにフェンスの外をぼんやり眺めていた。
短くなった煙草が吸われ、先が赤く灯る。
そこで、一服するために屋上へ来たことを思い出し、ポケットから潰れた箱を出す。

「お迎え待ってんの?」

ふいに銀時が口を開いた。
高杉は煙草に火を点け、銀時に向き直った。

「本題はそれかよ」
「んー、まあね」
「生徒が学校の外で何しようが、興味ねぇだろう」
「んー、まあね」

やる気の無い声。
高杉は、確かに迎えを待っている。

銀時は何かを知っているような態度で、しかしそれに興味は無い様子だった。
だからこそ、高杉は焦りも苛立ちも感じなかった。

「でもねえ」
ぼんやりした目でこちらをみる。

「あいつらは止めときな」
「…どいつらのことだ」
「お前が最近つるみ始めた方々のこと」
「…なに?」

迎えは、最近になってアルバイトをするようになった会社からだ。
その内容もあまりおおっぴらにできるものではない。
具体的な言葉に、高杉はいぶかしんだ。

どこで、何を見られた?

「まーとにかく先生、高杉には学校に来てもらわないと困るわけ。怪しいバイトで青春謳歌するのはいいけど、ほどほどにな」

フィルターだけ残った吸殻を携帯灰皿に押し込み、銀時は屋内に戻っていった。

何とも言えないまま、高杉は重い音を立てて閉まっていく扉を見ていた。

「なんだっつーの…」

タイミングを計ったように、ポケットで携帯が震えた。







090909
作品名:手放しでフェイク 作家名:ダミタ