青い宮殿の訪問者
マサキがジャシンを倒してから、半年以上経ったある日──
世界が平和になってから、タカハルとレイは、天界を定期的に見回ることになっており、エタニティパレスにある、とある一室を私室として使う許可をもらっていた。
そして、エタニティパレスのロビーでレイとのんびりしていたのだった。
「これ、素敵な味ね…」
テーブルとソファが置かれており、テーブルの上には紅茶、細長いテーブルを挟んで向かい合うように、タカハルとレイは座っている。
「カモミールっていう種類の紅茶なんだよ。身体にいいし、リラックス効果もあるんだ。」
「人間界には、美味しいものがたくさんあるのね…。」
タカハルは、レイがそう言っているのを満足そうに見ていた。
そうして、のんびりした時間を過ごしていた時…
急に、ロビーの入り口の扉が、攻撃によって開けられた。
ビキ、ビキっと亀裂が入り、次の瞬間ガシャアアン!!という音と共に、扉の破片が周りに散らばった。
「!!」
タカハルとレイは、デビルと出会った時のように戦闘態勢になる。
レイがすかさず前に素早く出て、タカハルは仲魔をコールできるようライザーを構えて向けた。
「ヒェヒェヒェ!!ここが天界の主要なパレスの一つか〜」
タカハルもレイも、見たことがないデビルだった。
「この神聖なエタニティパレスに土足で踏みこむなんて…なんて暴力的なデビルなの!?」
レイが敵を睨みつけている。
敵は2体いた。ヒェヒェヒェと言いながら入ってきた緑の身体をした一つ目のデビルと、もう一体はライオンの上に髪の短い少女が乗ったような姿のデビルである。
「へぇー、もしかしてあんたがエンゼルチルドレンって奴?」
ライオンに乗った少女のデビルは、気さくに話しかけてきた。
「お前達は…誰だ!?
何をしに、このエタニティパレスに来たんだ?」
「へへへ…勝てたら教えてあげるわよ」
そして、敵のデビルと戦闘になった。
タカハルはライザーを構えて仲魔を呼び出す。
「コーーーール!!」
空中に星形の魔法陣が現れ、中心部からタカハルの仲魔が呼び出される。
呼び出した仲魔はテンシ属性のエンゼルだ。
「お呼びですか?タカハル」
少女のような外見に、赤い布巾のようなものを被っており、背中には白い小さな翼が生えているかわいいデビルだ。
頭には天使のワッカがついており、先端にハートの形のついたステッキを持っている。
エンゼルは、前の敵と周りを見回す。
「このエタニティパレスで、初めて見るデビルがいてコールされたってことは…
エンゼル、テンシとしてこの敵と闘います!」
隣にいたレイがエンゼルに声をかける。
「行くわよ、エンゼル。」
「はい!このエタニティパレスで、怪しい奴らに好きにはさせないです!!」
「初めて見る敵だ…気をつけて」
タカハルが声をかける。
「マハザン!!」
「いけっ!ザンマ!!」
そして、戦闘は続いたが、ネオフェニックスになったレイ達とのレベルの差があったのか、敵は割とすぐ倒れた。
「ヒェヒェ…魔界も、人間界も、天界も…みな戦場になる!!
戦いに侵食された世界に向かって…
もう 動き出しているのだ…!!」
「あー負けちゃった。
じゃあ紹介するわ。
こっちの緑のデビルがバロール、アタイはキュベレ。
目的はまぁ、単刀直入に言うと、あんたのエンゼルチルドレンの力を、アタイ達の仲間になることで勢力が優位になるために利用したいって話しなんだけど…どう?
力を提供してくれるなら、その分色々いい報酬やサービスとかしてあげる。」
タカハルは激怒した。
「そんなのに賛成する訳ないだろ!!」
レイも続く
「聖なるエンゼルチルドレンの力をあんたたちみたいな下品な奴らに使うなんて…あり得ないわ!」
「ふーん。わかったわよ
ボスに伝えとくわ。まぁ、後悔しても知らないからね。」
そう言って、2匹のデビルは消えていった。
エンゼルはぷくーとふくれている。
「なんですか、あの図々しいデビルは!!
しかもエタニティパレスの扉を破壊していきました!
エンゼル、怒ってます!!」
レイは、ため息をついた。
「ほんとうに、乱暴なデビルだったわね。
…それでも、私達が魔界を冒険した時にあんなデビルはいなかったわ。」
「あぁ。エタニティパレスの扉の事も、デビルの事も、ナタナエル様達に報告しよう。……敵の目的は、エンゼルチルドレンの力なのか…?」
タカハルは、そこでハッとした。
(…もしかしたら、マサキも狙われるかも…
連絡しておいた方がいいな…)
先ほどのデビルが言っていた、利用という言葉に、過去にマサキと冒険した時に、ラグエルに都合よく利用されていた事をふと思い出していた。
(…僕はもう、あんな奴らに利用されない。
自分の人生は、自分で決めていくんだ…)