祝福
12月24日──
世間一般にはクリスマスの日だが、マサキとタカハルにとってこの日は誕生日でもある。
同じ日に、同じ病院で生まれ、幼馴染みとして育った2人。
そして、この日マサキとタカハルは、悪魔のハーミルと天使のパクによって、それぞれ力を与えられたのだ。
「せーのっ…」
『メリークリスマース!!!!』
タカハルの妹である翔の合図で、マサキ、タカハル、翔、クレイとレイ、そして今回はタカハルの自宅にて誕生日兼クリスマスパーティが行われていることにより、タカハルの母でクラッカーを鳴らした。
「これが、クラッカーっていうのか…
この緑のテープ、オレの体の色みたいだな」
キマイラのクレイが、クラッカーを鳴らした後落ちてきた濃い緑のキラキラ光るテープを左の前足にかけて、しみじみと見つめている。
「この白い大きなデザートが、クリスマスケーキっていうのね…。ワタシが近づくと溶けちゃうかしら…」
フェニックスのレイが、ろうそくに火がついたクリスマスケーキをそわそわしながら見ていた。
マサキとタカハルは、その様子を見ていてお互い顔を見合わせて笑った。
「そっか、俺たちはもう慣れてるけれど、クレイとレイは初めてだったな。」
「クリスマスにしか見られない物、色々あるもんね。」
そこへ、翔がケーキの取り皿を持ってきながら話した。
「マサキ、お兄ちゃん、お誕生日おめでとう。」
「翔、ありがとうな!」
「ありがとう。」
翔は、えへへ、と小さく笑った。
その様子を見て、マサキは軽く息を吐いた。
「…でもほんと、安心したぜ。今年はデビチルになって色々あったけれど、無事に翔もヤミの眠りから目を覚ましたしな。」
翔は、両手を後ろで組みながら話す。
「マサキ、お兄ちゃん、ありがとう。
二人で薬を探してくれたから、翔はまた前みたいに遊んだりできてるんだよね。
もうこれからは、危ないところに近づかないようにするね。」
タカハルの母が、さりげなく近づいて来た。
「マサキ君、おばさんからも、改めて翔を助けてくれてありがとう。
マサキ君が薬を持ってきてくれなかったら、今頃楽しいクリスマスは過ごせていなかったはずだから…」
「いや〜、そんな。俺は自分にできることをしたまで…ですよ。」
マサキは頭を軽く掻きながら笑っている。
冒険で起こった色んな事を思い出していた。
「…なんかしんみりしちゃったな。そうだ、タカハル、ちょっと思いついた提案があるんだ。」
「どうしたんだい。」
そして、マサキは持って来ていたヴィネコンの画面を見せながらタカハルに話す。
「いいよ。やってみよう。」
そして、マサキはデビライザーを、タカハルはエンゼルライザーを構える。
「「コーーーール!!」」
デビライザーからはクイックシルバーが、エンゼルライザーからはエンゼルが召喚された。
クイックシルバーは白い姿に青いヘッドホンをしたようなユーレイのデビルである。
電撃の魔法が得意で、腰から下は稲妻のような形をしている。
「マサキ!僕をコールするなんて珍しいね。」
「タカハル、どうしたんですか?」
マサキとタカハルは、デビダスの画面を見ながら伝える。
「クイックシルバーは、ハピルマの魔法使えるよな?」
「うん、使えるよ〜」
「この後街に行って、空からハピルマの魔法をかけてきてくれ。」
「街にハピルマをかけて来ればいいんだね。OK!」
ハピルマは、相手をハッピーの状態異常にさせる快楽の魔法である。
「エンゼルは、神様の愛の恵みを少しずつプレゼントする天使だよね。」
エンゼルはこくこくと頷いている。
「クイックシルバーと一緒に、街の空からそれをやってきてほしいんだ。」
「了解です〜」
マサキは窓を開けて二匹を送り出す。
「頼んだぜ。」
クイックシルバーは、窓からジグザグに空を昇っていき、エンゼルは、ぱたぱたと翼で飛び立っていった。
「…それじゃあ、この辺りでいいかな。」
「そうですね!始めましょう!」
街の少し上から、二匹で手分けしてあちこちに魔法をかけていく。
「景気付けってやつだね。えい!ハピルマ!」
「神様からの愛の恵みを、少しずつプレゼントです〜♪」
「こっちも〜。ハピルマ!」
「エンゼルは、人々の幸福を祈ってます♪」
エンゼルの赤い頭巾とクイックシルバーの白い姿の色が、日没後の黒い空に映えていた。