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オーダーカラー

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同じ大学の、同じ学科に雲雀恭弥と沢田綱吉はいた。
二人は学年は違うが、元々学科の人数が少なかったためよく合同で講義をうけることが多かった。

雲雀は早くから才能を発揮し、何度も大賞を受賞していた。
かたや沢田は普通で普通だった。出品した絵も良くて入選。しかしそれで十分喜べるほど普通だった。
期待のされ方が違う。
恐らく、沢田のことを知るのは教授と友人、他一部の人間くらいのものだろう。

その一部の中に雲雀恭弥はいた。



彼の絵が好きだった。
特にどこか突出してるわけでもない普通の絵だ。
それでも雲雀は彼の絵が好きだった。

色彩が綺麗だと思った。
上手く活かしきれていない部分が多く、まだまだ粗削り。
しかし所々に化ける片鱗を感じさせる、まだ誰も気付かない、雲雀だけが知る予兆。
彼の粗が全て削られ、光沢のある艶が出始めた頃皆気付くのだろう。
それほどまでに鮮やかだった。





ある日、雲雀は沢田を飲みに誘った。
彼と話をしてみたかった。
沢田は声をかけてしばらくは驚いたり動揺したり慌ただしかったが最終的には頷いてくれた。
そこで彼の色彩の鮮やかさと豊かさの理由を知ることとなる。
人として沢田綱吉は豊かな人間だった。
よく変わる表情、普段からあまり他人と接触を持たずにいたため会話には不慣れな雲雀に合わせ、話し繋ぎ、引き出す。
自分にもこんな部分があったのかと内心驚くことも多かった。

彼との時間は心地好いものだった。



それから、雲雀の絵に変化が現れる。
今まで寒色系や原色、引き締まる様な色を主に使用していたが、少しずつ暖色系がパレットに増えていった。

なぜこれまで使ってこなかったのだろうと思うほど、それらは雲雀の感性を刺激した。











卒業を間近に控えた頃、雲雀は個展を開くことになった。
変化した雲雀の絵は以前加えより評価を受けていた。そしてその中の一人から個展の話を持ちかけられたのだ。
雲雀は教授から連絡先を聞き、沢田に招待チケットを送った。





一度人の流れが途切れた午後二時。
一つの絵の前に佇む青年の姿があった。

「お久しぶりです」

そう言って、沢田綱吉は招待チケットの礼を述べた。
自宅と大学の個室を貸し切って作品を描いていた雲雀は、実に半年ぶりに沢田と対面した。

「気に入るのあったかい?」
「全部見てどれも良かったけど、オレはこれが一番好きです」

雲雀から、先程まで眺めていた作品に視線を戻す。
春を思わせる色彩に情熱的な色を散りばめた鮮やかな配色。

「僕も、これが一番気に入っている」
「すごく綺麗です。まるで」



















「恋の色ですね」
















その瞬間。
全てが止まったように思う。

そして、なぜ自分の絵が変化していったのかに気付き



自分の隣で、彼が耳を赤くさせている意味を理解した。



















僕らは初めから、お互いに恋をしていたのです。

作品名:オーダーカラー 作家名:七篠由良