どーも、名無しの審神者です。
実は、先日うちの刀剣男士に恋刀(?)を紹介されたんですよ。
うちは訳あって――まあ、ほぼ九割自分が原因なんですけど――少数精鋭の本丸でして、刀剣男士は全部で七振りしかいないんですよね。
その中でも最近顕現した孫六兼元が「主、折り入って話したいことがあるんだが、少し時間を貰えるか」なんて急に言い出して、一瞬『あれ? いつの間にか長義たちをすっとばして孫六の修行が解禁されたのか?』と勘違いしました。
――で、ここからが本題、いや、問題なんです。
うちの孫六、よりにもよって他所様の刀剣男士と恋仲になりやがったんですよ……?
お相手の刀剣男士は、色々あって万屋街のお茶屋さんで働く看板刀で、最初に孫六が声を掛けて、その後店に通い詰めて口説き落としたって言うんですよ。
他所様の、刀剣男士を。
口説き落として、相手方の審神者さんの了承も得ずに。
本刃の承諾を得たから問題ないと開き直って、心身共に結ばれたって言うんですよっ!?
阿、呆、があぁぁぁぁ!!
問題しかない!
一から十まで問題しかないでしょ!?
色々事情があってお茶屋さんで働いているとは言え、その相手も本丸所属の刀剣男士だから!
お前普段俺のこと何て呼んでる?
主人って呼ぶじゃん!
そのお相手の男士にも、主人が居るの!
そういう主人がいる相手の場合、守らなきゃならない手順があるんだってばっ!
まずは両家にご挨拶――この場合、先に俺が相手方の本丸にご挨拶に伺わなけりゃならんでしょうよっ!
あー……怖い。辛い。油断したぁ……。
もっとちゃんと、はっきりさせとくんだった……。
一時から妙に浮かれてるなぁとか、非番の度に外出してるなぁとか、孫六の行動が変わったと思った時に、もっとちゃんと理由を訊いておくべきだった。恋仲の相手が出来たこと自体は、まあそういうこともあるよなぁと思うけど、よりにもよって他所の本丸の刀剣男士を口説いて、ちゃっかり本懐を遂げた後に報告とか、そんな阿呆な話があってたまるか馬鹿垂れぃ……。
あー……もうほんと、相手の審神者さんに何てお詫びすれば良いのか……ねえ、どこかに『自分の本丸の刀剣男士が他所の本丸の刀剣男士に手を出していたことが後で発覚した場合、審神者が相手方に謝罪する方法』とか載ってる纏めサイトとか本とかないですか? あったらそれはそれで嫌だけども……。
そもそもさぁ、相手方も会ってくれるかと言う話ですよね。
顔も見たくないとか、どの面下げてとか、どうやって落とし前をつけるんだとか、言われたらどうすれば……。
あー、あー、あー……怖い。滅茶苦茶怖い!
つうか、今まで一度も恋人が出来たことのない人間に何てことをさせるんだよあの野郎はよ。
はぁー……今なら『出来ちゃった婚を前提に嫁側の実家へ挨拶に行く婿側の親の気持ち』が痛い程良くわかる。
一生経験したくなかった。
絶対に、こんな気持ちは理解したくなかった!
はぁー……あの野郎……俺よりも先に恋を成就させるとか……はぁー……。
ちなみに、さっき初期刀に愚痴ったら、五分も経たず「煩いよ」と部屋を追い出されました。
辛過ぎたので、ここで話を聞いて貰えて嬉しかったです。
……はぁぁぁぁぁ……挨拶行きたくねぇー……。
《終わり》
そして今度は菓子折りに悩む
作品名:どーも、名無しの審神者です。 作家名:川谷圭