続・どーも、名無しの審神者です。
――いや、いいけど。聞くけどさぁ……お前、その紛らわしい言い方、いい加減どうにかならんの?
さて、話は年明け前の師走初旬に遡る。
前年に他所様の刀剣男士と恋仲になったというとんでもねぇ事後報告を受けてから、もう一年が経った訳だ。
あの後、相手方の審神者さんには無事挨拶が出来たよ。
本当にできた人で、舌を噛みまくったこっちの謝罪を嗤うことなく受け取ってくれた。
諸々の順序はともかく、あちらの審神者さんは、孫六が向こうの刀剣男士と恋仲になったこと自体は好意的に受け入れてくれた。若干名、本丸の男士から断固反対の声は上がっていたが、その辺は審神者さんがぴしゃりと一喝していたよ。
あ、ちなみに孫六の恋刀さんは陸奥守吉行でした!
何か、演練で見掛ける陸奥守とは随分と雰囲気が違っていたけど、最初からそうだったらしい。
こう、若干女性っぽいと言うか――華奢とまでは言わないけれど、如何にも良い筋肉してますね! という演練会場で見掛けた陸奥守とは、やっぱり違うんだよなぁ。
取り敢えず、はっきり言えることは、一目見て断言できる程の美刃(びじん)さんだったと言うことだ。
孫六、主人よりも先にこんな美刃な恋刀を口説き落としてちゃっかり彼氏に収まるとか、ほんと……ほんと、お前、ほんと……。
「どうかしたか?」
「っあー、いや、すまん。それで、相談したいことって?」
「ああ、実は年末年始に陸奥をうちの本丸に泊めたいんだが」
「は?」
「駄目だろうか?」
「いや、ちょっと待て待て。それ、向こうの本丸には了承して貰ったのか? それともこれからか?」
「これからだな。まずは主人に伺いを立てた方がいいと陸奥が言っていた」
「本当に出来た恋刀さんだな~!」
ありがとう、そしてありがとう!
あと孫六、お前はそういう報連相の重要性と優先順位の付け方をもっと勉強しような。
「あー、うちはいつでも歓迎するよ。ただし、あちらさんが了承すればな」
「ああ、承知した」
この時に孫六が普通に返事をしていたから、自分ははまたしても油断した。
孫六と陸奥さん(こう呼ぶと孫六が苦虫を百匹嚙み潰したような顔をする)の交際を認めていないあちらの過激派男士数振りと孫六が『手合わせ勝負だ!』と向こうの本丸の道場を半壊させたと連絡が来て、自分と初期刀が謝罪と孫六の回収へ向かうのは約三時間後のことである。
《終わり》
反省を活かしてくれ、頼むから!
作品名:続・どーも、名無しの審神者です。 作家名:川谷圭