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姫隊長ウドちのおまけのおまけ

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結婚という共同生活が始まってから、互いにストレスなく生活を送っている。顔を合わせる時間が少ないせいもあるのだろうが、セフィロスにとってクラウドの干渉の少ない距離の取り方は心地よかった。時折甘えたようなそぶりを見せたかと思えばこちらを甘やかしてくる行動には少しばかり驚かされたが、それすらセフィロスには不快に思えなかった。セフィロスに兄弟はいないが、弟がいればこんなじゃれあいもするのだろうと思った。
クラウドも兄弟はおらず、父も物心つく頃には家庭にいなかったという。クラウドは故郷の話をなると口が重くなる。故郷の母とは時折手紙を交わすらしいが、結婚を明かしていないことを鑑みると、不仲ではないにしても何か思うところがあるのだろう。もてあました親への甘えの感情を向けられている。セフィロスには家族愛、とりわけ父性的な役割を期待されているのだろうと感じていた。
しかしながら、セフィロスはクラウドに対して庇護的欲求はまるで抱けなかった。大切にしたくないわけではない。だが、セフィロスは家庭というものを知らず育った。親の愛情と言われても、どんな態度を取るべきか分からなかった。
クラウドを見るときに感じるのは憐憫と苛烈なほどの独占欲だった。こんな男を守るためだけに籍を汚すことになって気の毒だという思いと、手放したくない、誰にも渡したくないという強欲がセフィロスの内にあった。所有欲、あるいは征服欲。まごうことなき欲望だった。そんな感情を抱いていることをクラウドに明かしたことはない。何でも許容してしまう流され癖のある彼のことだから、知れば気まずい思いをしつつも拒絶することはないだろう。セフィロスはそう予想立てているが、強引にこの思いを押しつける気はなかったし、明かす気もなかった。できれば、彼の望むままに生活してほしかった。クラウドが結婚を申し込んできたのは愛情ゆえではなく、セフィロスへの同情でもない。己がそうしたいからだと答えた。だから、これ以上しがらみに囚われることなくのびのびと生活してほしかった。
セフィロスは、恐れずにまっすぐ見つめてくるクラウドの瞳が好きだった。あの眼差しが自分に注がれているなら――そこに込められた感情がどんなものであったとしても、何にだって耐えられると思っていた。



「さらさらだ……」
うっとりとため息をつきながら、クラウドは銀の毛先をいじくっている。飽きもせず自分の頭髪以上に手入れをするその姿を、セフィロスは呆れ半分で好きにさせている。もう半分は、口にはできないような複雑な欲求でできているので、あえて直視するのは避けている。
「楽しそうだな」
「俺、あんたみたいに髪を伸ばしてみたかったんだよ。でもこの通りのくせ毛だからこんな風にまっすぐ綺麗に生えてこなくて……嫌か?」
「嫌なら触らせてない」
「嫌じゃないなら、もうちょっと触っててもいい?」
クラウドは背後からひょこっと顔を覗かせてねだった。こういう甘えのポーズを取られると、セフィロスは内心困り果てた。俺が悪い大人ならお前はとっくに食われているんだぞ、正直にそう警告してやりたかった。いっそのこと、同じことをクラウドに施してやろうか。セフィロスはそう思ったが、触れたら最後、無意識にそのうまそうなうなじや耳に齧りついてしまうだろう。
「好きにしろ」
抑揚のない返事に拒絶の色を見出せなかったらしい。クラウドはもそもそとセフィロスの背に回り髪を梳いたり束ねたりと忙しい。くすぐったい感触が髪や背に這いまわる。
「きれいだな」
言葉以上の意味はないであろうその賞賛を、セフィロスは鋼の意思で聞き流そうとした。
容姿やその力を褒め称えられることに慣れているセフィロスだが、クラウドのそれはこそばゆくて仕方なかった。それでいて耳に甘く、胸に温かく満ちていくのだからたちが悪い。理性を溶かす毒のようだと思いながらも、セフィロスは目を閉じ、柔らかく髪に触れる手の動きを楽しむことにした。