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バイオハザード Fの起源 第2話 東欧の闇:Fウイルスの胎動

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ジェイクは一時的に設けられた、ホワイトハウスのエージェント、シェリー・バーキンの執務室の前に立っていた。
厳重な警備の中、シェリーは休む間もなく任務に当たっている。
彼自身は、護衛という任務に内心では辟易していたが、シェリーの笑顔を見るたびに、その不満はどこかへ吹き飛んだ。

「ジェイク、ありがとう。あなたがいてくれて、本当に心強いわ」

執務室から出てきたシェリーが、ジェイクに笑顔を向けた。
その言葉に、ジェイクの心は温かくなる。

「別に。俺はただ仕事してるだけだぜ」

ぶっきらぼうに答えるジェイクだったが、その表情は少しだけ緩んでいた。
シェリーはジェイクの言葉に慣れているようで、気にする様子もなく、むしろ優しく微笑んだ。

「そうね。でも、本当に助かってるわ。ありがとう」

シェリーの言葉に、ジェイクは内心で大きく動揺した。
ソニアが「愛は世界を救う」と言っていたことを思い出す。
彼女の皮肉が、少しだけ現実味を帯びてきたような気がした。

だが、彼らの平和な時間は長くは続かなかった。
ホワイトハウスの緊急通信システムが、再び奇妙なノイズを感知したという報せが届いた。
それは、ペンタゴンを襲ったB.O.W.たちが発していたものと酷似していた。

「またか…!」

ジェイクは舌打ちした。
新たな戦いの悪い予感がする。

(バカ女のいるラボも、また狙われるのか…!)

ジェイクの脳裏に、ペンタゴンの医療ラボで入院しているソニアの姿がよぎる。

彼女のように自分もかつて、すべてのウイルスに抗体を持つ血液を狙われた。
Cウイルスを強化して毒性の強いウイルスを作ろうとしたネオアンブレラに、まさに吸血鬼どもに狙われたのだ。
ソニアは、当時の自分と全く同じ状況にいる。

(くそっ、また同じことの繰り返しじゃねぇか…!)

Fウイルスを利用しようとする組織に対し、ジェイクの心に強い憤りが込み上げてきた。
それは、相棒としての使命感だけではなかった。過去の経験からくる、根源的な怒り。

ソニアを守ることは、同じように利用され、歪められた命を狙う組織への明確な敵意表明でもあった。
レオンからの緊急通信が入ったのは、その直後のことだった。

「ジェイクぼうや、ホワイトハウスの状況はどうだ?ペンタゴンと同じ電波妨害か…くそっ」

レオンの声には、疲労の色が濃い。
彼は世界中のバイオテロの情報を追っていた。

「ああ、その通りだ。バカ女のいるラボも、また狙われるかもしれねぇ」

ジェイクは苛立ちを隠さずに答えた。

「ソニアの件は、やはりFウイルスの問題で間違いないだろう。そして、奴らは相当な確信を持って動いている。我々の情報源では追いきれない部分が多すぎる」

レオンは重い口調で言った。
彼の言葉は、事態が想像以上に根深いことを示唆していた。

「だが、諦めるわけにはいかない。この件には、BSAAも動いている。
クリス・レッドフィールドと彼のチームも、奴らの動きを追っていると聞いている。各地での任務を終え、新たな指令を受けている最中だ。彼らなら、この組織の尻尾を掴めるかもしれない」

レオンの口からクリスの名前が出た瞬間、ジェイクの目がわずかに光った。
伝説の英雄、クリス・レッドフィールド。
父親のウェスカーのことで、複雑な気持ちを抱いたこともあったが、彼の存在は、ジェイクにとっても希望の光だった。

「クリス・レッドフィールドか…。あの不死身のゴリラ野郎が本気を出せば、多少は役に立つだろうな」

ジェイクは相変わらずの口調で言ったが、その声には、確かに安堵の色が混じっていた。

「とにかく、シェリーの護衛を頼む。彼女が安全な状態か確認できるまで。そして、ソニアの身辺にも最大限の注意を払え。奴らは必ず、また動き出す」

レオンは通信を終えた。
ジェイクは通信端末を握りしめ、遠くペンタゴンの方角を見た。

ソニアの無表情な顔が脳裏に浮かぶ。
彼女がどれほどの真実を知ったのかは分からないが、きっと彼女もまた、この世界の理不尽に怒りを感じているだろう。

Fウイルスを巡る争いは、まだ始まったばかりだった。そして、この戦いの裏には、レオンの知る情報だけではない、深淵なる陰謀が渦巻いていることを、ジェイクは肌で感じ始めていた。


[newpage]

ソニアは白い天井を見上げていた。

消毒液の匂いが鼻をつく。
隣の機械が規則正しい電子音を刻んでいる。
右腕に鈍い痛みがあった。あの爆発で、骨折したのだ。

「目が覚めたか、ホークアイズ」

低い声が聞こえ、視線を向けると、クリス・レッドフィールドがベッドの傍らに立っていた。

「クリスか……レオンは?」

ソニアの声は掠れていた。

「レオンは今は別件で動いている。お前は少し安静にしておけ」

クリスはそう言ってラボから出て行った。
自分の顔を見に来ただけのようだ。

だが、クリスの表情がなぜか気になった。


その日の夜遅く。
ペンタゴンの医療ラボの一室。



「あーあ、暇だなぁ。ジェイクちゃんもレオンのオジサマも、全然相手してくれないしぃ」

彼女は独りごちていた。
ジェイクはシェリーの護衛任務に詰めており、レオンは今回の事件の黒幕を追うため、世界中を飛び回っている。

不意に、病室のドアが開いた。
音もなく、影のように現れたのは、黒いチャイナドレスを纏った東洋人の女性だった。

「こんばんは、お嬢ちゃん」

その声は、甘く、しかしどこか冷たい。
ソニアは、その声の主をじっと見つめ返した。

(んー、この女が…レオンのおっさんが忠告してきた女スパイか?…いかにもそんな感じでわかりやすいな)

ソニアは即座に警戒態勢に入る。
彼女はエイダという女スパイの噂を聞いていた。
レオン・S・ケネディが長年の腐れ縁を持つ、謎多き女。
彼女の出現は、常に厄介事を意味する。
それほど、エイダは、危険な存在でもあった。

「ソニア・ホークアイズ。貴方の『鷹の目』は、やはり素晴らしいわ」

エイダの声は甘く、しかしどこか冷たい響きを持っていた。
その声は、ソニアの心の奥底を揺さぶるような、不思議な魅力を秘めていた。

ソニアは無言でエイダを見つめた。彼女の「鷹の目」は、エイダの表情の微細な変化、瞳の奥に隠された感情を読み取ろうと試みている。

エイダはゆっくりとソニアに近づき、ベッドサイドに置かれた医療記録に視線を落とした。
彼女の指先が、ソニアの血液データが記載された部分をそっと撫でる。

「Fウイルスとの適合…そして、貴方の父親の研究。全ては繋がっているのよ」

エイダの言葉に、ソニアの心臓が大きく跳ねた。
父親の研究。彼女は、父がFウイルスについて深く関わっていたことは知っていたが、その詳細は闇に包まれていた。
ペンタゴンは、彼女にその真実を隠し続け、どんなの頼んでも教えてくれることはなかったのだ。

「何を言っているの?」

ソニアは感情を抑え、冷静を装って尋ねた。
喉の奥がカラカラに乾いていた。

ソニアは、その底知れぬ危険を孕んだ雰囲気に、素知らぬ顔を保ち続けた。
目的のためには手段を選ばない、とレオンから聞かされていたその存在が、今、目の前にいる。