お兄さん達と一緒v
最近は、春になってようやくぽかぽかと暖かいお日様の光が入ってくるようになりました。
わたし、本田菊もお日様と一緒に起きて、幼稚園の準備に取り掛かります。
「きーくー。起きてるあるか?」
「はい、にーに。きくはちゃんとおきてますよ」
お部屋に顔を出してくれるのは、一緒に住んでいる王耀さんです。
お母さんとお父さんがお空の星になったので、遠い親戚の耀さんが引き取ってくれました。
まだ若いみたいで、「にーに」って呼んでます。
でも、何才かはしりません。
お母さんとお父さんがいなくなったときは、すごく悲しかったけど、今は大丈夫です。
「菊はちゃんと自分で起きてえらいあるねー。いい子いい子ある」
「わわっ!にーに、きゅうに抱きついたらびっくりしちゃいます」
ぎゅっと抱き上げられるから、びっくりします。
にーにはいつも突然だから。
ぐりぐりって頬を引っ付けられて、ちょっと痛い。けど我慢です。
これはにーにの愛情表現ってやつなのです。
「お顔洗って、朝食にするあるよ。今日はデザートに桃もつけるある」
「わー!きく、モモ大好きですっ」
「よかったあるー」
にっこりと笑うにーにはきっと、きくの好きなものを知っていて出してくれるんです。
そんなにーにが、きくは大好きです。
そのとき、ものすごい音と共に、玄関が開きました。
小さなアパートだから、音がよく響きます。
「グッモーニン!今日も学校前に菊に会いにきたんだぞ!」
大きな体が飛び込んできて、またびっくりです。
でも、これもいつもと同じなのです。
このアパートに住むお兄さんのアルさん。
よく遊んでくれる大きいお兄さんです。
大学生さんです。
キラキラの髪とお空の色のお目々が綺麗です。
「おはようございます、アルさん」
「おはよう、菊。今日もとってもキュートだね」
にーにに抱かれたまま、ペコリと頭を下げると、アルさんはすごい速さでにーにから私を抱き上げました。
すごいです。いつもあっという間にアルさんに抱き上げられてしまいます。
「もう!きくは男の子ですよ!」
「ははは、男の子でも菊はキュートなんだぞ!」
ぷうっとほっぺたを膨らませると、そこに顔を寄せてきます。
よくアルさんはきくにちゅってしてきます。
嫌じゃないけど、ちょっとくすぐったい。
「こんのガキ!菊を離すある!ちゅーしていいのは我だけあるよ!」
「やぁ、耀。気付かなかったよ。いいじゃないか、かたいこといわないでくれよ!」
「とっとと大学行けある!!」
にーにがアルさんを怒鳴りながら追いかけるけど、きくを抱いたまま器用に避けていきます。
すごいなぁ。
「おい。アルフレッド!いい加減にしろよ!」
そのとき、玄関から新しい声がしました。
見ると、息を切らせた男の人が立っています。
アルさんと同じキラキラの髪と葉っぱの色のお目々のひとです。
この人はアサさんです。アルさんのお兄さんです。
立派な眉毛の人なのです。
お2人もこのアパートに住んでます。上の階の端っこのお家です。
「毎度毎度、気が付いたら俺のメシ残してここにきやがって!」
「当たり前だろ?誰が朝から兵器を口にするんだい?」
「ふざけんなよ!兵器ってなんだ!」
ドスドスと入ってきて、アルさんに怒ります。
これもいつものことなのです。
近くにきたアサさんに、ペコリと頭を下げます。
「アサさん、おはようございます」
「あぁ、菊。おはよう。アルフレッドがごめんなぁ。馬鹿力で痛くないか?俺がだっこしてやろうか?」
怒っていたアサさんは、きくを見ると優しいお顔になります。
さっきとは別人みたいですね。
大丈夫です、と言い掛けて、私の体はまた宙に浮きました。
にーにがアルさんから私を取り上げたのです。
「いい加減にするあるよ!この味オンチ兄弟!毎日毎日邪魔ある!」
「いいじゃないか!アーサーの料理は食べられないし!菊と一緒がいいんだぞ!」
「おい、どういうことだ!ゴラァ。ま、まぁ・・・菊が一緒に朝飯を食べたいっていうなら、一緒に食べてやってもいいぞ」
「うざいある、眉毛。邪魔ある、メタボ」
にーにのお顔に筋が浮かびます。
にらみ合っている3人に、きくはちょっと困ります。
でも、時間は待ってくれません。
だから、勇気を出して、今日もきくは頑張るのです。
「えっと・・・きくはみんなでご飯を食べたい・・・です。ね、いいですよね?」
だって、幼稚園に間に合わなくなります。
しぶしぶと3人は食卓へとついてくれます。
元気いっぱいな朝ですが、みんなで食べる朝ごはんは美味しいです。
今日も素敵なことがいっぱい起こりそうですね!