ティラン王アザーラ パターン3
ラヴォスの衝突にも耐えたティラン城。地中に深く埋まってしまったが、6500万年先に地殻が隆起して地上に姿を現し人々に目撃される。
地層の年代から学者達は恐竜時代からその城があると推定したが、城にある物は全て6500万年経つというのに傷一つなく、劣化の痕跡すらなかった。
まるで宇宙人や神が介入したかのような特殊な材質で造られたものだと誰もが思ったが、それは6500万年前の当時住んでいた恐竜人達でさえ、どのような技術で造られていたのか理解できなかった。
白亜期には既にその城はあったが、その頃であっても城の建設方法を知る者はいなかった。実のところティラン城には寿命というものがなく、宇宙が創造される前から既にあったと語る者さえいた。
城は恐竜人の王の瞬間移動の力によって惑星間を引っ越ししながら、地球へと運ばれてくるのだが、恐竜人は長過ぎる時間地球で生活する間に、地球へとやってきた経緯や自身達が地球外生命体であった事を忘れてしまった。
そんな恐竜人の最後の王となるアザーラはラヴォスの飛来に巻き込まれて死んでしまう。死に場所はラヴォスの衝突にも負けない丈夫な城だったのだが残念ながら地盤は普通であった為、地中深くにラヴォスと共に落ちていく。
王は城がとても丈夫であることを知っていたし、地盤の弱さも十分理解していたが、あえてラヴォスの落ちる場所に城を置いた。ラヴォスが落ちることを事前に知りながら城を置き、ラヴォスからは瞬間移動で逃げられるのに逃げなかった。
実のところアザーラは逃げるという感情すら沸き起こらなかった。人生の終わりを受け入れ、ラヴォスに抗えたはずなのに抗わずに、猿人種との戦いに執着して最後は負けるようなシナリオで終わる。
そうなると原因を作ったのがラヴォスだろう。
ラヴォスに向けてテレパシー等で意識を接続してしまうと、思考が崩壊し論理的な判断ができなくなる。
混沌の領域(カオティックゾーン)を持つラヴォスは、接続してくる者の精神を混乱の領域に引きずり込んでしまう。アザーラは夜空に光る赤い星に興味を持ち、接続してしまうが、この物語のアザーラは未来視の力でそうなる自分を事前に察知し、回避する。
なぜこのアザーラはラヴォスの危機を回避できてしまうのだろう。
未来で起きる出来事を知って今時点の行動を変えられるにせよ、混沌の領域に引きずり込まれる未来の自分の姿は存在しなくなるのだから、未来視をしたとところで自身の危機を知ることは出来ないのでは?
未来の危機を事前に知って助かるには、未来で被害を受けた事実(未来で被害を受けた歴史)がまず必要になるはずで、その歴史がもうないのだから、前提として危機があった事を知る事もできなくなり、危機を回避できなくなるのでは?
城の学者はこれについて、以下のように解釈した。
【『未来で被害を受けた歴史が作られた』でなく、『未来で被害を受けた歴史が創られた』である。】
『創る』『作る』の本質的な意味合いの違いについて、『創る』は創造の世界の領域であり、現実には存在しない。一方『作る』では現実にそれが作られる(歴史が成立してしまう)ので、その歴史的過去を変えることはできない。
未来に作られる事実(歴史)はいつも直進的で前に進み、その歴史を変えることはできないが、その歴史が創られたものであればまだ創造の領域であり、歴史(事実)として成立していないので、その未来を変えられる。
我々恐竜人は星から力を得ているとされ、あくまで星がこの世界の主役。未来視と思って見ているもの正体は全て星が観ている夢(創造の世界)なのかもしれない。
【夢だからこそ、それが現実になることはない】と結論してみたが、本当にそうなのだろうか。私は未来視の力でいくつもの未来を変えてきたツモりだった。でも見えていた未来は全て幻想のようなものだったということになる。
幻想であるなら、ラヴォスに向けて接続しても問題ないのかもしれない。
試しに接続しようと思ってみたりもしたが、ラヴォスが落ちてきたのは事実なので怖いので止めておくことにする。
未来のアザーラはラヴォスが大地の全てを焼き付くすような事を言っていたが、実際落ちてきたラヴォスについては落ちた場所の一部を焼いていただけだった。世界全体が焼けるようなことはなかった。
その未来のアザーラの思考はおかしかったから、勘違いで認識していたのだろうが…
作品名:ティラン王アザーラ パターン3 作家名:西中



 

 
    