マールディア視点の現代風味(序盤
子供だった私は王族であることの自覚がまだ足りなくて、護衛の監視を振りきって走り回っていた。その時、そこでぶつかった男の子といっしょに公園で遊んで、その後、その子の友達の家に遊びに行って、色んな発明品を触らせて貰って…
当時は同世代の友達なんていなかったし、大きな機械なんて間近には観たことなかったから、見るもの見えるものの何もかもが新鮮で、私はその日のことを10年たった今でも鮮明に覚えている。
親に頼んで、あの家には何度か遊びに行ったのを思い出す。
けれど、ある日、その友達のお母さんに不幸があってケガをさせてしまったらしい。
王族が家にやってくるという事で掃除をしている最中に事故が起こったらしく、つまりそれは私がその友達の家に遊びに行こうとしたのが原因で…
気まずくて申し訳なくなって、それからはその家にも、その友達にも会いにいきにくくて、男の子の方とも疎遠になってしまった。
たしか名前はクロノとルッカ…。
ルッカの事はたまに新聞やテレビで見ている。若き天才発明家として有名人で発明大会では内閣大臣賞をとっていて、その受賞式の場には私も公務で出席してたけど、まさか私の事を覚えている訳ないよね?
もしも覚えてて貰っても嬉しい半分、悲しい半分の複雑な気分で…
そんなルッカが千年祭にて世紀の発明ショーをするということで、私もそれを観てみたい。けど、たぶん公務のスケジュールで無理そう。でも公務をする場所は千年祭会場であり、ルッカのブースまでは近いし、見に行ける隙があったら行けるかもしれない。
お忍びで変装するし、マスコミ対策も万全にする。
でも、それを申し出たら、父に怒鳴られた。
『王女たる者が庶民の集まりに参加するなんてわきまえてない。もし昔にみたいに迷惑かけたらどうするんだ。自覚をしなさい』
という事らしい。
確かにそうだと思うけれど、私はあの日からずっとその事を配慮して生きてきたし、あの事故だって、王族という事を隠してお忍びで遊びに行ってたら起こらなかったかもしれない事
私が気にしている事故の件を持ち出して私を束縛しようとする父のことが嫌で堪らなくなる。父の事が何だが卑怯者のようで思えて、だから私は絶対にルッカの発明ショー出席するつもりで、監視や護衛を振り切って逃げる為のシミュレーションをした。
色々と迷惑をかけるだろうけど別にいいと思う。
王族なんてどうせ民からは税金泥棒のように揶揄されているし、汚名の一つでも私が使って王族制度を解体できるなら、それはそれで良いことだと思うから。
とは思ってはみるものの、王族としての英才教育を受けてきた身としては受け入れにくいものがある。 自分で自分を否定するその考え方はまるで自傷しているようで肯定しきれない。
精神が安定してなくて、その事をお母さんに相談してみたら凄く怒ってパパに説教を始めた。
『建国1000年を祝う記念すべき日に、娘だけ祭りを楽しめないなんてどうかしてる!』
母がこんなに怒ったのいつ以来だろうか…
母の怒った顔を見るの、まさかこれが初めてじゃないのかと錯覚する程に、ちゃんと怒ってくれてたように思う。
私はむしろ祭りで遊べることよりも母が真剣に怒ってくれて味方してくれた事の方が嬉しくて…
その時の私は何故か泣いてしまって…
でもそれは祭で遊べるから嬉しくて泣いてたんじゃなくて、でもとにかく、泣きたい程に祭に参加したい事だと伝わってくれて当日は問題なく参加できることになり、それに合わせて公務のスケジュール調整もしてくれることに…
作品名:マールディア視点の現代風味(序盤 作家名:ヘケラン西中



