塔
最高の設計、建築技術、国と地域の許可、地球の条件との折り合いの末、出来た摩天楼のひとつに沢田はいる。
正直今回の会談場所ほどダメツナ精神を刺激する場所はないかもしれない。
どんなに歴史と美術品と金と悪意で装飾された中でも、彼はボスの顔を保てた。
だからこそ、地上でこれほどオープンな空間は少し落ち着かない。
だいたいマフィア同士の会談に、こんな場所選ぶなよ、と思う。ボンゴレの基地、施設が地下に潜っているのがほとんどなので、高い建物には慣れていない。
慣れない以上に畏怖が心にちらつくのだ。
自然の摂理に反抗しているように聳え立つスカイスクレーパーは、何か今にも、人間には手に負えないものの逆鱗をかすめそうで。まるで聖書の中の塔のように、今この瞬間から崩れていってしまわないか。
要するに、沢田はこの場所が怖いのだ。
その心情を部下が聞いたら一笑に伏すだろう。
ご冗談を! 我らがX世
貴方はこの世でもっとも
最も高い摩天楼ですら
かするのがやっとな空そのものでありますのに!