飲まない理由
ガウェインの逸物からは先走りこそ滲み出てくるが、一向に硬度を上げていく様子はない。
あれだけ飲めばそれも仕方ないとはいえ、達したいという強い気持ちがあるのならばこれはこれで不憫である。
ネツァワルピリは乱暴に犯してしまいたい衝動をひたすら押し込んで、相手が射精に至ることができるよう反対の手で双球を優しく揉み込んだ。
そこから筋を指先でなぞり上げ、竿の根本を擽ってやる。
びくびくとガウェインの腰が跳ね、乱れた呼吸の合間に甘く淫らな吐息が漏れた。
「っ…、ん、ぁ…」
またひと筋、彼の目尻から涙が落ちていく。
双球への刺激を続けながら、逸物全体を手のひらで扱きあげるとガウェインの大腿部がひくひくと痙攣して。
その反応に相手の限界を察して、ネツァワルピリは動きを変えずにそのまま追い上げた。
「は、あ……ッ、や…、…ぁあっ!」
少しして、くっと下腹部に力が入ったかと思うと、柔らかいガウェインの雄からとぷりと白濁が溢れる。
ぴくぴくと弱々しく震えながら、白濁は名残を惜しんでいるかのようにしばらく止まることなく流れ出ていた。
それを絞り出すように竿を数回、優しく扱いてやる。
「…ガウェイン殿、大丈夫か?」
「……ん、」
余韻に浸っているのか、目を瞑っている愛しい男に声をかける。
浅葱色の瞳がこちらに向けられることを期待して待つこと十秒。
呼吸は落ち着き、ひくついていた身体も大人しくなったというのに、一向に瞼が持ち上がる様子がない。
「……ガウェイン殿?」
これは。まさか。
嫌な予感がして、ネツァワルピリは身を乗り出して相手の顔を覗き込む。
果たして、予感は的中していた。
ガウェインは穏やかな寝息を立てて、眠りに落ちていたのだった。
「……」
まあ、相当酔っていたし、こういうこともあるだろう。
そもそも無理はさせないつもりではあった。
あったが…
ネツァワルピリは細く吐息を落とし、己の聳り立つ臨戦態勢の息子を見下ろした。
出番がなかったことにさぞ驚いていることだろう。あれだけ色気を充てられたというのに、集まった血液たちが困惑しているのが我が身のことながら手に取るようにわかる。
仰向けにすやすやと寝ているガウェインにそっと布団をかけ、その横にごろりと寝そべり頬杖をつく。
無防備な寝顔だ。流れた涙のあとがなんだか痛々しくて、指で拭ってやった。
どうせしばらく寝付けそうにない。
せっかくなので、ネツァワルピリは愛する人の寝顔を堪能することにした。
+++
翌日。
ガウェインは、人生初の二日酔いの洗礼を受けていた。
「……気持ち悪い」
「はっはっは!水を持ってきた、しっかり飲むのだ」
頭痛に吐き気、そして目が非常に腫れぼったい。
ネツァワルピリに背を支えてもらいながら起き上がり、なんとか水分を摂取して盛大な溜め息をつく。
気分は最悪だったが、自分の介抱をしている間は彼が別の誰かのもとに行ってしまうことはないと思うと、これはこれで悪くないかもしれないなどという考えに至る己は、もしかしたらそれなりに末期なのかもしれない。
「…ジークフリートは」
なんとなく気になって、相手の飲み仲間の所在を訊ねる。
ネツァワルピリは、一度きょとんとしてから小首を傾げた。
「わからぬ。もう艇にはいないやもしれぬな」
「……会ってないのか」
「我もずっとここにいたのでな……先程水をもらいに厨房には行ったが、見かけなかった」
「…なら、いい…」
喋るのも億劫で短く返し、起こした上体をぼふんと布団に戻してうずめる。
こいつが、ジークフリートではなく自分を選んだ。
それがわかっただけで満足だった。
ネツァワルピリの関節が目立つ長い指が、さらりと前髪を優しく梳いてくれる。
「…今日は水分をしっかり摂って、休むと良い」
「……貴様はどうする」
「お主に飲ませた責は我にある。快癒するまでお供しようぞ」
「…当然だ」
そばにいてくれるという言葉に、自然と頬が綻ぶ。
が、不意にネツァワルピリがこちらの頭の横に肘を突いて、覆い被さるように顔を近づけてきた。
口元は笑っているが、何やら赤褐色の瞳は不穏な色を称えている。
「そして、回復した暁にはガウェイン殿にも責任をとってもらう」
「せ、責任…?」
「昨夜、我にお預けを食らわせた責任である」
「はっ…?……いや…おあずけ…って…」
艶やかに細められる目元に、確かな劣情を感じ取って口篭る。
目を逸らすことができなくて固まっていると、額に軽い口付けが降ってきた。
「覚悟召されよ」
「……え、と…」
引き攣り笑いを浮かべてやり過ごそうとするが、ネツァワルピリはあっさりと身を引いてベッドから下りてしまう。
不覚にも期待してしまった自身をひた隠し、ガウェインは勢いよく布団を頭まで引っ張り上げるのだった。
fin.



