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役立たずがここにいる

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世の中、案外思いやりでできているんです。いつ気付いたかは忘れましたが、そんなものなんです。嘘じゃないですって。
 思いやりっていっても募金活動みたいな立派なことじゃあないし、正直地味なことでして。例えば、そう。駅のプラットホームの白線とでこぼこ、とかがそうなんです。信号機とかでもいいんですけど。
 何故って、だって常に注意を促したりするためにした工夫でしょ。一般人も悪人も皆平等に危機から遠ざけようと、わざわざ白線描いたり信号機作ってるんでしょ。これを思いやりと言わずして何て言うんですか。


 そして、あなたも。

「あなたも、白線や信号機と一緒だ」



 午後の光が緩やかな日。場所はさて、どこだったのか。季節さえ覚えていない。抗争も雑務も無縁の日。
 いつも下らないことをしゃべる沢田綱吉はそこまでひと息にのたまった。


 「あなたに近づかなければ、あなたという境界線に近づかなければ、並盛の住人は安全に生きられることを知ってる…いや」


合いの手を打つことすらしない相手の、無言をちゃんと聞き分けて彼は話す。


 「並盛だけじゃない。あなた、そんなつもり少しもないのにこのままじゃランボに勝るとも劣らぬ避雷針役ですよ」


 「それが僕への見舞いの言葉かい」

 「いえ。今回あなたが負傷したことに関してのオレの意見です」

 「君の価値観を押し付けないで、殺すよ」

 「ああ、もうなんでしょうね」


 なんで、あなたみたいな怖い人まで、こんなに優しいんでしょうね、この世界は優しさでも出来てるのに、なぜ殺しあうんでしょうね。


 駅のプラットホームの白線、町中にある信号機、果ては雲雀恭弥にまで優しさを見いだして沢田綱吉は泣いた。





 この世界は君を救えない優しさで出来ている。
作品名:役立たずがここにいる 作家名:夕凪