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息子

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 彼らは昔言った。
 自慢の息子だ、と。それぞれ性格の違いゆえに表情に差こそあれ、どちらもとても晴れやかに、また誇らしく笑ったものだった。
 どちらも長い付き合いの友だった。
 そしてどちらも既にこの世にはない。
 だが、その自慢の息子達は、共に巨大な運命に翻弄され、それでもそれを自らの力で乗り越え、よりたくましく成長している。
 二人とも普段はごくごく普通の青年であり、少年であった。しかし。
 かつて女王の統べる国で用なしでしかなかった王子は、両親と妹を奪われ、無くした物を取り返すために敵に立ち向かい、みごとそれをしてのけた。
 国に裏切られ、父にすらも追われる身となった公子は、国の不正に真っ向から立ち向かい、それを正したという。
 多くの者の力を得て、一人ではけして成し遂げられはしない巨大な運命と戦い、勝利した二人。
 それを自分は今、すぐ間近で見つめている。
 なんと、この子供達の頼もしいことか。
 友よ、お前たちの息子はお前達のように誰よりも強く、誰よりもたくましく、育っているぞ。


「ゲオルグ!」
 母ににた面差しで、父に似た目をする青年が自分を呼ぶ。振り返ると、その傍らにはもう一人、少年で在りながらその父と同じ静かな眼差しを持った少年がたたずんでいた。
「次はどこへ行くのか話していたんだ。ゲオルグは、どこへ向かうつもり?」
 手に古びた地図を持ち、次の目的地を、と言う青年の顔は生き生きとしている。
 その姿を十年と少し前の姿と比べてみて、ゲオルグはつい、笑みを零した。
「次は北の都市同盟へ行こうと思っている」
 先の戦乱からようやく落ち着いた旧赤月帝国から、その北のジョウストン都市同盟へ。
「じゃあ、決まりだ」
 黒髪の少年が微笑む。銀の髪の青年もその傍らで無言で頷いた。
「王子!」
「坊ちゃーん」
 荷物をまとめてきた青年と女性の二人がかけてくる。
「目的地が決まったよ。満場一致」
 青年がいつも傍らにたたずむその女性に告げれば、少年の傍らで親のようにつき従う青年も穏やかに微笑む。
「では、また途中まで皆さんご一緒できますね」
 それぞれが今のこのときを楽しむように、皆で次へと進んでゆく。
 そんな彼らの背中を見守りながら、ゲオルグも共に歩みだす。
 向かう先に、また自分の手を必要とする彼ら二人とよく似た少年が、居るような気がした。

作品名:息子 作家名:日々夜