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計画主任はメイドスキー?

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「暗号が解読されていると?」
 戦争計画主任・宗方怜士の問いに、夏目尚康は頷いた。
「まぁ、今に始まった話題でもないが、その可能性はあるな」
「どうします?」
 声を潜めて訊ねれば、
「そうだな……」
 彼は顎に指を添えて暫し考え込み、
「メイドスキーでも送信しておこうか」
 そんなことを言い放ってくれる。
 いま、なんといっただろう?
 宗方の台詞に、夏目は己が耳を疑った。
「は?」
 間の抜けた声色で宗方へと問い返す。だが、彼は飄々としたものだ。
「あの与太作家さんに言ってだな、続編を通信文に紛れ込ませておけ。連載にでもしておいてやればいいかもしれん」
 それは確かに戦地の将兵たちは喜ぶかもしれないが。
「赤軍に傍受されたらどうするんです?」
「別に構わんじゃないか」
 当然といった口調で返ってきた台詞に頭痛を感じる。
 合衆国人は喜ぶかもしれないが、ロシア人は卒倒しかねないぞ、これは。
 苦労に苦労を重ねて暗文を解いたら、出てきた文章が『社会主義はメイドスキー』だなど、さすがに敵軍に同情してしまいそうだ。確かに欺瞞・防諜・宣伝には有効であることは認めて、率先して使ってはいるものの、それとこれとは話が別である。
「……ちなみに伺いますが、それはご自分が新作を読みたいから、ということじゃないでしょうね」
「君は読みたくないのか?」
 問いに対して問いで返され、夏目は言葉に詰まる。
 読みたいかと問われれば、正直なところ読みたい。
 それは偽らざる本音だ。
 だが、それを電文に混ぜるなど、正気の沙汰ではない。
 あぁ、やはりそうなのか……。
 鬼怒田大佐がモントリオールで言っていたことは間違いなかったわけだ。
 計画主任はメイドスキー?
 不意に思い浮かんだフレーズに、夏目は脱力する。
 冗談は笑えるものだけで十分だ。これでは洒落にもならない。
 これは計画主任の弱みというかなんというか……いや、それは弱みになるか?
 彼個人の嗜好の問題であって、あまり弱みとはいえないかもしれない。
 いや、これはまた違った意味で弱点かもしれないな。
 大日本帝国の全軍を統括する人間がメイドスキー。
 どちらかといったら、個人の弱みというよりも、帝国軍の弱みになってしまったような気がするな。
 夏目は思わず、遠い目となった。
 個人的な嗜好から、一気に国家規模の醜聞へと昇格してしまった感がある。
 夏目は眩暈を感じてふらついた。
「どうかしたのか?」
「いいえ……どうもしません」
「顔色がよくない」
「あなたの気のせいです」
「何か問題でもあるかね?」
「……ありません。早速、手配をしておきます」
 計画主任室を辞した夏目は考える。
 今度は締め切りをちゃんと設定しておかないと、な。
 そして、あの与太作家には一体何を言われるか。
 内心で溜息をつきつつも、夏目は彼の家へと向かうことにした。



 その後。
 暗文に変換された『社会主義はメイドスキー』の新作を受信した側・傍受した側ともに困惑したのは……しかし、両軍の兵士たちには好評を博したのは、記すまでもない。




(2008.5.3)