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この痕が残る君の肌が好きだ

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「いたい」


がぶがぶと臨也さんの腕を噛む。細いのに、しっかりと筋肉もあって締まっている腕。しなやかに伸びる腕を俺は離さない。手首から順に関節、二の腕とどんどん上にあがりながら丁寧に余すとこなく噛む。全部噛まなくちゃ、もったいない。


「おいしい?」
「おいしくないです」


噛みたいだけであって、食べようとしているわけでもないですし。強く噛んだり、軽く甘噛みしたり、強弱をつけながら噛んでいく。強く噛んだあとに残る歯形が愛おしい。でも、強く噛んだあとには、ゆるゆるとまるでキスするかのように甘噛みしたくなる。甘噛みを繰り返していると、だんだんと強く噛み千切るように噛みたくなってくる。その繰り返し。臨也さんの腕は、痕だらけだ。


「まだ?」
「はい、あとちょっと、」


最後に肩にがぶっと強く噛み付く。何度も断続的に噛む力を強める。がぶがぶと噛み続け、気がつくと臨也さんの肩には無数の血に滲んだ歯形だけが残っていた。


(ああ、きれい)


「あーあ、こんなにしちゃって、」
「すいません」
「って思ってないでしょ?」
「…はい」
「まあ、いいや、交代」


そういって俺の指を噛み始めた臨也さん。


「…なんか、変な気分ですね」
「なに?やりたいの?」
「そういう意味じゃないです」


変なの、俺はそう呟いて、臨也さんが俺の手首に噛み付いている様を見る。痛い、けど、痛くない。気持ち悪い、でも、やめてほしくない。


「人にされる気分はどう?」
「…悪くないですね」


僕にしては素直な言葉だった。臨也さんはこちらをちらりと見たあと、歯形をべろんと舐めた。


「噛み癖に舐め癖ですか?」
「だって、君おいしいんだもん」


がじがじべろん。赤い舌が艶めかしい。


「頭おかしいですね」
「君もね、」