Killertune
「ばか東上!こっちにかたしたって言っただろ!」
米袋は、倉庫の中の別の場所に移動されていただけだった。奥の方にあったものを、東上が使いやすいようにと越生が手前に移動させたのだ。しかし東上はそのことをすっかり忘れてしまっていたらしく(ただ越生が言ったタイミングも疲れきった東上を前にしてというものでいささかよくなかったのは事実だが)、大騒ぎになってしまった、という…。
「死ぬかと思ったぜ」
喉を擦りながら呻く武蔵野に、ばつが悪そうな顔で東上はぼそぼそと謝る。
「悪かったよ…でもおまえがいきなり出てくるから」
「いきなり出てきたら首しめてもいいのかよ?」
「っ…、そんなじゃないけど」
「まあまあ、いいじゃなーい☆無事解決したんだしさ!」
ねっ、と笑って間に入った八高に、東上はほっと息をつく。ち、と武蔵野は気づかれぬよう舌打ちを。八高はあれで案外タイミングを読むのがうまい。
「米がなかったらどうしようって思った。ほんと、あってよかったぁ…」
ふう、と胸をなでおろして安堵の溜息をついた東上は落ち着いたものだが、先ほどの取り乱しようは半端ではなかった。
食料事情が荒れてきたときの伊勢崎を思い出しながら、武蔵野はしみじみと、東上も案外東武なんだな、と呟いた。
きっと彼らは言うに違いない。
皆貧乏が悪いのだ、と。
作品名:Killertune 作家名:スサ