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ドラクエパーティーのとある戦闘

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「ククール以外はテンションため。ククールは死ぬまでスクルト」
「がってんでぇ兄貴!ためるでげすよ!」
「絶対に倒してやるわ!」
「……………。」
翼の生えた黒い魔犬を見据えながら徐々にテンションを上げていくエイト、ヤンガス、ゼシカ。
そんな中ククールはひとり低テンションのままスクルトを唱え続けていた。
ゼシカがテンションための合間を見計らってフバーハを唱える。おそらく黒い犬が何かしら吐いてくると直感したのだろう。
しかし最初のターンでは犬の攻撃は尻尾による物理攻撃2回だけだった。
そのダメージ程度を見て今のところ回復は必要なしと判断し、エイトはククールもテンションをためるよう指示する。
「自分のHPが200をきったら各自武器防具で回復。
ククールは100をきった者にベホマ、ヤンガスとゼシカはそのままテンション上げて」
「テンション50に上がったでげす!」
「わたしも上がったわ!」
「よし、パターン的にそろそろおたけびがくるから、転んだ者は補助に変更、残った者でしとめる。
全員転んだらテンション20で総攻撃。ゼシカは転んでも転ばなくても残った者にバイキルト」
「わかったわ!!」
「俺は?」
「スクルト」

次のターンで案の定おたけびがきた。ククール、ゼシカが転び、エイトとヤンガスが残った。
「ゼシカは俺・ヤンガスの順にバイキルト。ヤンガスは100に上がり次第攻撃。
ククールはスクルト終了、ベホマラーに変更」
ゼシカのバイキルトでエイトの攻撃が2倍になる。
直後、運良くエイトのテンションが爆発・攻撃態勢に入る。
次のターンでギガスローが炸裂、1259のダメージを与えた。
「ヤンガスの攻撃が入ったら全員でテンション上げ。ゼシカはその前に自分にバイキルトをかけて。
こごえる息を吐いたらククールはベホマラー」
「ぬおおおー!!やったるでげすよ兄貴ー!!」
「俺っていったい……」
ヤンガスのテンションが100に上がり、次ターン頭でゼシカがヤンガスにバイキルトをかける。
そのままかまいたちが炸裂、1140のダメージを与えた。
次のターンでゼシカは自分にもバイキルトをかけた。
「よし、全員テンション上げに入る。ククールも。ククールも。腐ってないで。」
補助ばかりの指示に腐るククールを促す。
次ターンで全員テンション上げにかかった。
最中こごえる息を吐かれたりしたが、ベホマラー係のククール以外はひたすらテンションをため
ついに50まで上げた。
これからいよいよスーパーハイテンションへと上げにかかる。ターン頭でまずゼシカが爆発した。
その時だった。


魔犬がいきなり凄まじいおたけびを上げた。


グオオオという咆哮とともに部屋を揺るがしたそれは
こともあろうにエイト、ヤンガス、ククールと次々すっ転ばせ
せっかく上げたそのテンションを片っぱしからたたき落としていった。

「うわ………」
「マジかよ………」
「いってえ…………」

一瞬の出来事だった。何ターンもかけてやっと上がったテンションがよりによって爆発寸前でどん底に落とされてしまった。

今までの苦労はいったい…………
転んだままあぜんとなる男3人。

ああ……また一から上げなおし………――――――――


しかし。その隣でひとり爆音に耐え抜いたゼシカが堂々仁王立ちしていた。


テンション20で総攻撃――――とエイトは口にしようとしたが
変わらず赤々と燃え上がるゼシカに気がつくと、とっさに言葉を飲み込み、
「ゼシカ、そのまま……うわあっ!!」
変わりに何か言いかけたが激しい殴打に中断された。
転んだままのところを攻撃され、エイトは114のダメージを食らう。前ターンでスクルトの効果が切れていた。
しかし大ダメージにも関わらずエイトは1人残ったゼシカに向かって叫んだ。
「ゼシカ!双竜打ち――!!」
「えっ…!?」
条件反射で右手が動き双竜打ちが炸裂する。
スーパーハイテンション状態で繰り出されたそれはまさに炎をまとった双竜のごとく、
うねりを上げて真正面から黒い犬に襲い掛かった。



ギャアアァァァァ……!!


「す、すげえ……」
「一撃目でトドメを……」
「さすが俺のハニーだ……」
ギャアアァ、と、崩壊を意味する稲妻と共に悪魔的な断末魔が響き渡る。
またこいつらかと訳の分からない事をぶつぶつぼやきながら
黒い犬っころはそのまま漆黒の闇へと力なく崩れ落ちていった。
二撃目を遊ばせるという、とんでもない破壊力を目の当たりにして呆然とする男達を背に
ゼシカはふう、とひとつため息をつくと
まだ暴れ足りないムチを振り戻し、器用にまとめおもむろにその腰に止めた。
気が付くとそこにはへたり込むふがいない男3人を前に
男らしく仁王立ちする最強のゼシカ様という妙な風景が広がっていた。


後日、ゼシカ様は男どもを差し置いて、めでたくパーティーの斬り込み隊長に任命された。