二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

デカルコマニーの背骨

INDEX|1ページ/1ページ|

 

  誰が僕と同じようになれとお前をそそのかすのか






 舌打ちをするように顔をしかめて、十年前の僕は、わずかに顔をそらした。
 それのなんて幼いこと。これと僕は本当につながっているんだろうかとぼんやり思う。彼と僕の間には時間という絶対的な壁がある。十年という壁がある。その壁がある場所を突き破るように、沢田綱吉は存在していた。十年前の僕に上半身を持たれかけさせて。


 ねえ、君は今正気かい?君は危機感さえないの?
全部、後頭部さえ委ねて。あの、僕に。

君を殴ることしかしなかった、僕に!


 そして、あろうことか十年の年月越しに、君は僕だけを見ている。
 どうして、なぜ。まあるい子供の目で、子供にしかできない目で、まっすぐに。礼儀知らずにまっすぐ見つめている。
 今、沢田綱吉を支えている十年前の僕にも、それがわかったんだろう。
 沢田綱吉の細い白い、男らしさがまるで目立たない首筋に左手を這わせている。締め上げる気なんだろう。彼が気絶した後、僕に向かってくる気なんだろう。
 それはとても楽しいことだと思う。たとえ相手が僕自身でも。傷つくのが自分でも、戦うことは大好きだ。

 ふと、思いついて、沢田綱吉の足首をつかんだ。痙攣したようにつま先が動く。だけど、一番驚いていたのは十年前の僕。
 顔にすぐ出る沢田綱吉より、かなり深く驚いている。自傷の趣味は皆無だが、どこか愉快だ。

 「何してるの。はやく、首絞めなよ」
 自分のそれと同じ色をした瞳に向かって、挑戦状をたたきつけるように口を吊り上げた。さらに眉間にしわのよった十年前の僕は、左手に力をこめる。沢田綱吉は、もう震えるどころか瞬きひとつできないくらい固まってしまった。
 面白いくらいに、自分の手の中で硬直する彼の右足を僕は引っ張った。無意識に、でもどこか意識して、左胸の上につま先をおいた。
 そう、心臓の、上。

 「無礼者だね。沢田綱吉僕を足蹴にするなんて。」
 「り、理不尽!!雲雀さん!それ、ひどい!」
 「何を言ってるの。ひどいのは、」

 瞬間、沢田綱吉の首に背後から負荷がかかる。酸素の補給を数秒絶たれて、彼は意識を手放すことになった。薄い、甘そうな透明の目玉が、白いまぶたに完全に隠されている顔を見ていると、殺気がつきささる。
 誰、なんていわなくたって、ここには自分二人しかいない。

 「ひどいのは、君だよ。まずはそうだね。
 勝手にリングを押し付けてきたとおもったら勝手に壊したこと。
 勝手に敵に殺されたこと。まだまだあるけど、うん。
 最大なのはキング・オブ・マフィアのボスだってこと。群れの頂点にいる草食動物ってことだね。ひどすぎるよ」
 「・・・黙れ」
 「こんなに大嫌いなものでできてるんだ。ねえ、十年前の僕、ちょっとは努力して彼のこと嫌いになれない?」
 「嫌いだよ」
 
 ジャキン、と小気味よく響く音。一気に体の中で戦闘意欲が膨らむ。

 「嫌い大嫌いこれ以上ないくらい嫌いだ!!」
 「そう、それは、いいことだ」
 どうか、そのまま育ってほしい。それができれば、きっと、楽に生きれるだろうから。

 嫌い嫌い大嫌いでも好き。愛してる。
 後に、そう言った少年は、僕だけで、かまわない。
作品名:デカルコマニーの背骨 作家名:夕凪