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【リリなの】Nameless Ghost

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「大丈夫? フェイトちゃん」

 ベッドの脇に腰を下ろし、窓辺に寄り添って空を見上げるフェイトになのははそっと声をかける。

「うん、大丈夫。いきなり泣いてごめん」

 フェイトは空から視線をおろし、床に座って心配そうに見上げるなのはに笑みを送った。

「フェイトって、意外と涙もろいよね」

 なのはの正面で胡座をかいてお茶を飲むユーノが少し意地悪な笑みを浮かべながら少し今までのことを思い出していた。

「そ、そうかな?」

 フェイトはそういわれて、ここ半年間で自分は思いの外涙を流す機会が多かったと思い、少し赤面してうつむいた。

 なのはと分かち合った早朝の海辺。悪夢に悩まされる夜に感じた姉のぬくもり。裁判で自由になり再び親友と会えると分かったとき。ハラオウン家での最初の団らん。
 そして、そのどこにも悲しい涙が無かったこと。

「そ、そうだ、プレゼント開けてみない?」

 何となく漂った沈黙。それが嫌な沈黙ではなく、どことなく落ち着きのあるものだったが、なのははそれを払拭するように声を上げた。

「そうだね。アリシアが何をくれたのかちょっと気になるな」

 ユーノはそういってなのはの思惑に乗り、三人のちょうど真ん中あたりに集められた三箱のプレゼントを引き寄せた。

 アリシアは晩餐会に出席できない代わりに早いクリスマスプレゼントを三人に届けていた。
 それが夕食の終わりに高町夫妻から手渡されたとき、アリシアなりの気の使い方を三人は感じた。

 桜色、明るい黄色、新緑色の包装に包まれた小さな箱。それぞれがそれぞれの魔力光に対応し、その表紙に名前が記されていなくても誰に向けて送られたものかを類推することができる。

 なのははその中の黄色の小箱をフェイトに手渡し、フェイトは「ありがとう」と言ってそれを受け取った。

 中には何が入っているだろうかとユーノは考える。箱の大きさは両手で包み込めるほど。握り拳二つ分ほどの小箱。

「本とか人形じゃないよね。アクセサリーかな」

 ユーノは中身を透かすように持ち上げて蛍光灯の光に掲げるが、さすがにそれで中身が分かるものではない。

「ユーノ、別に危険なものじゃないんだから」

 フェイトはまるで爆弾小包を調べるような手つきのユーノを笑いながら包装を解き、中から現れた軽金属製の化粧箱を軽く振り音を聞いた。

「それは甘いよフェイト。アリシアの贈り物には細心の注意を払わないと。マタタビとか唐辛子とか。開けた瞬間に噴出したら怖いでしょう?」

「ユーノ君。さすがにそれはアリシアちゃんに失礼だよ」

 なのはは三人分の包み紙を丁寧に折りたたみながら苦笑いする。
 ユーノはアリシアの性質をよく理解していたが、さすがに妹への初めてのプレゼントにそこまで酷いブラックセンスを発揮しないだろうと判断できる。

「そうだね。じゃあ、開けようか」

 軽金属製の化粧箱。シルバーの表面に刻まれた『I wish that your Fate is not Doom and is Fortune』の文字はアリシアから自分達へと向けられた願いなのだろう。

 ユーノとフェイトにとっては慣れ親しんだ文字、そしてなのはにとっては最近最低限読み書きができるようになった文字。
 アリシアにしては実直な。それでいて切実な願いを確かに三人は受け止め、それぞれに目配せをした。

『いっせいのーで』

 三人は呼吸を合わせ、シルバーケースの箱を開いた。

 ユーノは怪訝な表情をし、なのはは目を見開き、フェイトは驚愕に唇を掌で覆い隠した。
 フェイトが取り落としたシルバーの蓋が床に転がる音が部屋に響く。

【Huh. Little Aricia did chic arrangement to you】(なるほど、アリシア嬢も粋な計らいをするものですね)

 その箱の中身を確認し、レイジングハートは机の上で興味深そうに紅い光をちかちかと明滅させた。