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【リリなの】Nameless Ghost

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 幾ら現場の判断が優先される時空管理局であってもその程度の権力の拘束はあってしかるべきだ。
 つまり、ここで彼らが既に調べ結果が出ている上での尋問を行っているのであれば、それを問いただすことでこちらに有利な状況が作れ、また、彼らが規定を遵守しいまだそれを行っていないのであれば、結果が出るまでの時間稼ぎが出来ると言うことだ。

「ふう……、いいでしょう。では、遺伝子サンプルの提供をお願いできるかしら?」

「もう既に手に入れているのではないかな?」

「あら、私たちは法執行機関の局員よ? そんなことをすれば管理局員の規定違反で起訴されてしまうわ」

 リンディは椅子から立ち上がりにっこりと笑って私の手を取ろうとする。
 なるほど、とアリシアは目の前にいる局員を道理をわきまえた人物だと評価し、自らの信頼できる感はこの人物はある程度は信用出来る人物だということだった。

(ならば、いちいち時間を無駄にする必要はない)

「リンディ艦長。私の推察でよろしければ話せるところまで話す準備があります」

 リンディは驚きの表情を浮かべた、それはクロノも同様で彼もまたこの尋問は失敗だったと思っていたようだ。
 確かに、尋問は失敗だった。しかし、彼らはその代わりにアリシアの信用を勝ち取ることが出来たのだ。ドローゲーム、アリシアはこのテーブルをそう評価し、リンディとクロノ、そして、視界の外にある監視カメラに目を向け、居住まいを正した。

「しかし条件が一つ。リンディ・ハラオウン艦長、クロノ・ハラオウン執務官、ユーノ・スクライア以外の退室を求めます。そして、これから話す件は一切の例外なく秘匿義務が発生する事を約束していただきたい」

 アリシアはこの一点のみは妥協するつもりが無かった。しかし、それだけ情報を限定することは、アリシアが本気で重大情報を公開する用意があるという印だった。
 リンディは一瞬だけクロノと目を合わせ、お互いに肯き合い、

「聞いての通りだ。なのは、フェイト・テスタロッサ、アルフは速やかに退室してくれ」

 終始狸の化かし合いのような会話を聞かされて退屈だったのか、気を張り巡らせていたのか、そういわれた三人の表情には安堵と同時にどこか阻害される事への寂しさも含まれているようだった。

「うん、分かったよクロノ君」

 その中で一番落胆していたのはなのはだったのだろう。なにぶん人一倍正義感の強い少女であるため、如何なる事にも首をつっこまずには居られないのだろう。
 そんな彼女だったが、その首につり下げられた赤い宝石が突然言葉を発した事にはさすがに驚いた様子だった。

《Captain Lindy and master.Is it good even if I, too, am respectively left?》(リンディ艦長それとマスター、私もここに残ってもよろしいですか?)

「えっと、ダメだよ、レイジングハート。わがまま言っちゃ」

《I request by all means.In the reward, do I let's treat two to the lunch tomorrow? 》(ぜひお願いいたします。何でしたら、お二人には明日の昼食を奢ってもかまいませんが?)

 なおも言い縋るレイジングハートに慌てたのはなのはのほうだった。

「ちょ、ちょっとレイジングハート。お金出すのは私なんだよ!?」

《Please relieve,master. We are always both 》(ご安心を、マスター。私たちはいつでも共にあります)

「そんなこと言ってもダメなものはダメなの。ユーノ君とパトロールするようになって出費が増えたんだから、節約するの」

「……ごめん、なのは。そうだよね、僕がなのはの所に止まるようになって食い扶持も増えたんだよね」

「ユ、ユーノ君、違うよだってフェレットさんのご飯なんてビスケットだけで十分なんだから。」

《Are you the man who depends on the girl in the food and clothing, not being in the ability? My original master》(甲斐性無しのヒモですか、元マスター。)

「レイジングハート!! そんなこと言うとまたお仕置きだからね!!」

《Endure only it.My best master style to respect》(それだけはご勘弁を、我が敬愛する最高のマスター様)

「おだててもダメ、お仕置きなの!」

「あ、あの、落ち着いて」

 レイジングハート相手に無茶苦茶怒りまくるなのはを宥めるフェイトに、すっかり気落ちして膝を抱えて部屋の片隅で震えているユーノを励ます<ruby><rb>アルフ<rt>フェイトのヒモ</ruby>は見ていて飽きないが、アリシアはレイジングハートのさらなる成長に頭痛で涙が止まらなかった。

《By the way, can you get permission?》(ところで、許可はいただけるのですか?)

 ともあれ、レイジングハートが自らの主を生け贄に差し出してまで我を通すからには、何か重要な理由があるのだろうと、アリシアは元所有者として考えながら、クロノとリンディに肯き返した。

「いいわ、レイジングハートはここにおいて行きなさい。後で返しに行くわ」

「あ、はい。ありがとうございます。レイジングハート、くれぐれも大人しくして無くちゃだめだよ」

 まるで我が子に言い聞かせるように指を立てるなのははどう見ても背伸びしている子供にしか見えない。

《I understand it. Don't break into tears in the loneliness even if I am not.My small lady》(分かっていますよ。私がいないからといって寂しさで泣き出さないでくださいね、私の小さなレディー)

 なのはからユーノに託されたレイジングハートはその手のひらの上で何度か明滅し、何処となしか心配性な母親か姉のような雰囲気を醸し出していた。

「泣かないもん、レイジングハートの馬鹿」

 フェイトはアルフをつれ、なのはの背を押しながら部屋を去っていった。去り際にアルフが鋭い殺意の視線をアリシアに送り込むが、アリシアはこれ見よがしに弾けんばかりの笑みを送る事にした。

「あまり感情を逆撫でするのは良くない傾向だ」

 クロノは半ば呆れ、さっきまで腕を組んで立っていた体勢を崩し、フェイトが座っていた椅子を取り寄せると自分もそれに座って幾分かリラックスした表情を浮かべた。

「人の嗜好にけちをつけるものではないよ、ハラオウン執務官」

 アリシアはおどけた振りをして手を掲げようとしたが、手が殆ど動かなかったので止めた。

「それにしても、あの白い……なのはとか言ったか。あの子とレイジングハートは、いつもあの調子なのか?」