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おはようからおやすみまで。

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---おはようからおやすみまで---


朝から気分がすぐれないのは胸元に当たるチクチクとした髭の感覚のせいだろう。


「なんでだよ」


イギリスはまだ起床には程遠そうに眠りこけるフランスに向かってつぶやいた。


昨日の夜、いい、と言うのにフランスが強引に腕枕をしてきて
イギリスはしぶしぶフランスの腕に頭を載せて眠りに就いた。

それが朝を迎えたら腕枕は外され、フランスが自分の胸元に顔をすりつけて寝ている。


「別に女じゃないし…期待もしてないけどな」

しかしなんとなく腹は立つ。
今回が初めてではない。
毎度事を終えるとフランスはイギリスに腕枕をしたがった。
イギリスは毎回それを断ったが、強引に腕にくるまれてしまう。

そうすると抗うのも馬鹿らしくなり、そのまま寝てしまう。

眠りに落ちる寸前に、フランスから自分の匂いがするのをいつも感じる。
フランスもそう思うのだろうか。
ああ、眠るまえの俺は女々しい、嫌だ、と思っているうちに寝てしまう。



「それで起きるとこれだから厭なんだ」


イギリスが起きる時にそのままフランスが腕枕をし続けていた事は一度もない。


一番最悪だったのは寝ているイギリスをベッドに放置したまま、
一人で朝食をとっていた事だ。
かなりムッとしたまま「俺のは」と聞くとフランスはのうのうと


「朝からうまいもの食べるとお前の胃腸がびっくりするんじゃないかと思って作らなかったよ」


と答えたあのときだ。


結局そのときは寝間着のままのフランスを家から叩きだして
自分で作った朝食をやけ食いした。
当然、まずかった。
いつもより、まずかった。


「思い出したらイライラしてきた…」


同じように復讐してやろうと思ったが、自分の作る料理はお世辞にもおいしいとは言えない。
むしろ、まずい。
はっきりとそう言える。

自分で食べてもおいしくないのだ。
フランスが自分に言ったような厭味は成り立たない。


まずい料理を食べさせて嫌な思いはさせれるかもしれない。
だが、そのあと厭味を言われるのは結局自分だ。
復讐にも仕返しにもなりはしない。


「まぁいいや…飯、つくろ…」


ひっつくフランスを引き剥がしてベッドから抜け出す。
胸板に髭の跡が残っている。



「あいつの髭頑丈すぎるだろ。そもそもどれけだけひっついてたんだバカ」


キッチンにむかい、冷蔵庫を開ける。
見事なほどに何もなかった。

正確に言えば、あるのに、ない。



つまり色々と食材はあるのだけれど、その中で何かを作る、と考えると何も浮かばない。


「はぁ…」


ため息をついて冷蔵庫のドアを閉める。
ドアを開けっ放しにしてそのまんまえに座っていたから
体の前面が異様に冷たい。


イギリスは小さく身震いをひとつして寝室へと戻った。
そこではまだフランスが心地よさそうに眠っている。


「結局、悩んでるのっていつも俺だけなんだよな」


口に出してしまうとその感情で頭がいっぱいになる。
悲しいわけでも、怒っているわけでもない。
ただ、少し空しい気持ち。


イギリスはしばらくフランスを見つめて、
今日二回目のため息をついてからフランスをベットからけり落とした。



「いて…!」
「やっと起きたか」
「何すんの。もう少し優しく起こして頂戴よ」
「いいだろ、別に。俺たちは優しく接し合う仲じゃない」


フランスはイギリスがなぜか朝から相当ご機嫌斜めだと悟ってはいるが、
なぜ怒っているかが全く見当がつかない。
窓の外を見ると青空が広がっていた。
こんな朝にいきなりつれない態度をされると言うのも悲しいものだ。
しかし原因が分からないのでどうする事も出来ない。


「まぁいいか…とりあえず、おはよう、イギリス」
「…おはよう」


機嫌が悪いのに挨拶を返すところは相変わらず礼儀正しくイギリスらしい。
そしてそこを好きだと思う。


「えー…君のそのお怒りは俺に対しての何かかな?」
「あたりまえだろ」
「んーと、なんで怒ってるか教えてくんない?」
「言いたくない」


それから何度聞いても言いたくないの一点ばりなので、
フランスは聞くのをあきらめてベッドルームから出て行こうとした。
その時、グンッ、と手をひかれた。
イギリスが引っ張っている。


「…どこ、行くんだよ」
「キッチン。おなか減ったし」
「おれんちのキッチンだ。つかうな」
「じゃあ、トイレ」
「おれんちのだ。つかうな」


今朝のお怒りは相当らしい。


「あのさ、イギリス。俺にどうしてほしいの?」
「言いたくない」


またか、と思いつつもここで引いてしまったらイギリスの機嫌はもっと悪くなるだろう。
人は聞いてほしい時こそ言いたくないというものだ。


「言いたくないって言うけど、それじゃ俺が困る」
「お前、困ってんのか」
「そりゃあね…困るよ」


イギリスが不意に笑顔を見せた。
口角を少し上げる程度のものだったけれど。


「フランスが困ってるなら、いい。それでいい」


訳が分からない、とフランスが眉をしかめると、
イギリスはさらにケタケタと笑いだしてキッチンでもトイレでも好きに使え、とベッドルームから手をひらひらと振って出ていくフランスを送りだした。


そしてイギリスはまだ頭の上に「?」マークを浮かべたままのフランスの背中に声をかけた。



「おい、もう少ししたら俺が朝食作ってやるよ」
「…お前が?」
「二人でまずい飯でも食おう」


それに対してフランスが喜んで、と答えるとイギリスは満足そうに笑った。