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【小話】 懺悔  【リンレン 近未来 】

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カンカンと日が照りつける中、どこまでも続く砂漠を歩く男がいました。
ターバンの端から覗くボサボサの髪には白髪が混じり、日に焼けたその肌には深い皺が刻まれていました。

いつまでも変わらぬ風景に、ある時変化が訪れました。
遠く遠くにポツンと小さな建物があったのです。

男は暑さに喘ぎながらその場所へ向かいました。

それは小さな教会でした。
窓は割られ壁は剥げ落ち、扉は半分取れかかっていました。
廃墟と呼んでおかしくないその建物から、それでも中から歌声が響いてくるのでした。

男は歌声に導かれるように扉に縋り付きました。
 
 ごとり

扉は男の重さに負けて砂の上に落ちました。

教会の中は既に砂だらけでした。奥には半分砂に埋もれている椅子と遠い昔には黒く輝いていたのであろう机があり、机の後ろには奇跡的に割れていなかったステンドグラスからマリア様が微笑むのでした。

歌声はその机の上から響くのでした。
砂を払い落としたそこだけが、まるで小さなステージのようでした。
机の上には、金の髪をした男女の双子が立っていました。
いいえ。男女というのは間違いでしょう。その二人は人間ではなかったのです。
男の子の方は、右腕がちぎれ配線が剥き出しになっていました。
女の子の方は、顔の右半分の皮が剥けて機械が見えていました。
二人は手を握り合い、机の上に立ち歌を歌っていました。

男は机の前に辿り着くと頭を垂れました。
「名も無き教会の主よ。神に仕えし僕よ。どうか私の懺悔を聞き届け給え。」

二人は同時に歌を止め、同時に男を見下ろしました。
その目には何の表情も浮かんではいませんでした。
「我等はこの教会の主ではない。」
「主は遠い昔、出て行ったまま帰ってこない。」
「我等は主の帰りを待つだけの者。」
「しかしここは神の館。」
「そなたが懺悔をするというのなら」
「我等が主に代わり聞き届けよう。」
二人は交互に語ると口を閉じました。

男は懺悔を始めました。
「私は隣国を治めるものでした。その頃、私の国は混乱が続きいろいろな物が急激に足りなくなっていったのです。
誰かが言いました。足りないならば有る場所から奪ってくれば良いと。
それはとても素晴らしい考えだと皆が言いました。
そして私はこの国に戦争をしかけたのです。

戦争は長引きました。いつまでも決着がつかず、私の国もこちらの国もズルズルと貧しくなっていきました。こうして互いの国が底の底まで落ちた時、ようやく戦争を終える事ができました。私は戦争を始めた罪人として、国を追われました。

どうか神よ。私の罪をお許しください。」

男の懺悔が終わると、教会には静寂が満ちました。
砂の崩れる音と、双子の体のモーターが廻る微かな音のみが時間の経過を報せました。

双子は同時に口を開きました。
「「 神の御名において あなたの罪を許します。」」
双子の顔にはどんな表情も現われませんでした。

双子はまた前を向き、続きを歌い始めました。
男は這うようにして砂漠へと出て行きました。

昔々、その教会は美しい森の中にありました。
そこは綺麗な湖があり、優しい人達が暮らす場所でした。

優しい人達に教えてもらった歌を、双子は歌い続けるのでした。