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あとは血となり骨となり。

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痛みに小さく呻くと、冷たい手で腰をわしづかみにしていた男は、その端正な顔を美しく歪ませた。
ニヤリ、といういつもの笑みとは違う、クスリ、といった仮面を被っている時のそれは、あまり好きではない。
こんな時までこの顔を見ていたいわけがない。


「今の、よかった?」


全然と答えたらどうなるだろうか。いつものニヤリとした笑いに戻るだろうか。
少し考えてから、それはないな、という結論に達する。というか確か前に、そう言ってみたことがあった。
言い切る前に律動が早まって、舌を噛みそうになったのだが、あの仮面は決して剥がれない。
あれは彼が人に興味を示している時の顔。知りたいと思っている時の顔。
返事など聞いていないのだ、ただ、探っている。口癖のようになっているだけで、大して意味を持たない言葉に、健気に意味を求めていた頃の自分とは既に違った。


「なにも言ってくれないんだね。よくない?もっとすごい方が良いのかな?」
「好きに、してください」
「あら素直」
「言ってもきかないでしょう」
「そんなことないけどね。で、どうする?もっとすごいのもやれちゃいますけど、する?」
「ヤだ」
「うん、シよう」


ほら見ろ、と呆れる間もなく、律動が早まる。ただの抜き差しだったその動きが抉るような動きに変わって背筋が震えた。
この人は人が好きだと言う。僕は一応(一応?)人間に分類されるので、やはり好かれているらしいのだが、だからといって男にこんなことをするのかと問うと、彼はいつだってクスリと笑った。


人は好きだけどね、こういうことするのは、やっぱり君が好みだったからじゃないかな。


どうやら彼の中では人は人でも色々と種類があるらしい。好かれているとこうなるのならば、この人に好かれたことのある男は皆こんな目にあっているのか。それは可哀想すぎる。
そんなことを思っている間に、そろそろ限界が近づいてきていた。意地になって背中に回さなかった手が、自然に彼の背筋に回る。
お願い、と切羽詰まった声で哀願してやっと開放される熱が腹にこすれて気持ち悪い。少し遅れて中に放たれた熱は、もっと気持ち悪いのだけど。


「帝人くんのさ、イく寸前にすがり付いてくる感じがたまんないんだよね」
「・・そうですか」
「あーもう食べちゃいたい!ってなるんだよ。流石にカニバリズムの趣味はないんだけど」
「あっても困ります」
「だよねー」


クスクス笑いが耳元で響く。覆いかぶさったまま笑うものだから、最中よりは大分控えめにだけれどベッドが軋んだ。
気持ち悪さに脱力しきった腕で密着する体を弱弱しく押し返しながら考える。この人に、食べられると言うこと。
この人の血となり肉となり、さらには骨となり、一つになる。この人の中に自分が溶け込む。

想像して眉根が寄った。いれられるのも大概嫌なのに、入るなんてもってのほかだ。ボールペンならまだしも、自分が、なんて。嫌だ嫌過ぎる。流石に勘弁願いたい。


「でもさー俺にはそんな趣味はないけど、そしたらさ、なんかイイよね」
「はぁ?」
「だって病める時も健やかなる時も一緒なわけでしょ。それはイイよね」
「はぁ・・・よくわかりませんけど・・・」
「大事だよーそこはとっても大事だよ帝人クン!はいって言いなさい!そしたらお兄さん幸せにするから!」
「お腹の中で?」
「正確には胃と大腸と小腸の中で?」
「・・・すっごいヤだ・・・」
「いやいやきっと言うほど悪くないよー」


ね、と覗きこむ顔にはニヤニヤとした子供じみた笑みが張り付いている。何が悪くないというのか。あんたは良いかもしれないが、こっちは死ぬほど嫌ですけど!・・・死ぬほどってか、死んでるけれども。


「最終的には排出されるわけだけどさ、その前に必要な分は全部吸収するし」
「必要な分ってなんですか。ビタミン?」
「そんな現実的な・・・例えばえーっと、愛とかね!」
「・・・へー」
「いらないものは全部ろ過して良いとこだけ吸収!すばらしい消化機能!」
「へー」
「だから大丈夫だよ?」
「?」


「今帝人くんがどんなにシズちゃんを好きでも、そういう無駄なのは全部取り除いてあげるからさ」


ニヤニヤ笑いが消えて、スゥ、と冷たい瞳が冴える。
この人、わかっててこんなことしてたんだ。少し呆れた。そして少し聞き捨てならない。


「無駄?」
「うん無駄。俺にとっては全く全然これっぽちも必要じゃないし」
だからいらないよね?いらないよ、うん、いらないんだ。


脱力していた足が再び抱え上げられる。腰をつかまれて再び深く沈みこまれて、息が詰まった。

「だから、今度は、きっと食べてあげるから」
「食べちゃいたい、で終わらないように頑張るから、」
「だから帝人くん、もっかいシよ?そんでまた可愛くおねだりしてよ」


食べてくださいって、おねだりしてよ。


懇願の色をチラつかせた瞳がそのままクスリと笑う。もう、何をいっても聞き入れない姿勢だ。今度こそこのまま本当に、食べられてしまうのかもしれない。
・・・でも少し、ほんの少しだけ。
この未練を消化してくれるのなら、良いかも、・・・なんて。





(意地でも思ったりしないけど!)