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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】惆

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「ちょっときみ今私の方見たでしょ」
 私の声に彼はうろたえるようなそぶりを見せる。本当にどいつもこいつも私をジロジロいやらしい目で見て、と私は思う。私はそういうエッチなやつがとにかく許せない。と、彼の顔を見ると、彼は私と同い年に見える少年だった。帽子も服も赤い。のちに分かったことだが、名前も赤を意味する。そんな、赤い少年と呼ばれ、のちに4色の子供たちと呼ばれるレッド・グリーン・ブルー・イエローのうちの一人。ただしそうなったのはもっと後のことで、まだこの時は私なんかよりちょっと強いくらいだった。
 ただし。私は彼が連れていたピカチュウに目を配った。かわいい。彼曰く、「こいつは雷の石が嫌いというか、反応しないんだ。雷の石をくっつけても、進化しない。だけど、他のピカチュウには考えられないような技を覚えているんだ」それならいいじゃないか、と私は思うのだが、彼は男だから、強い耐久を持つライチュウになってくれた方がいいのだろうか。しかし、そう聞くと彼はかぶりを振った。「俺が困っていた時、こいつはいつも助けてくれた。だからこいつが進化しなかろうと俺はこいつをパートナーとして連れ歩くさ」
 戦いのほうは勝てるわけがなく、私は仕方なく、彼とポケギアの電話番号を交換して、再戦するように頼んだ。私は今度はポッポだけでなく、ドンめるを連れていった。すれば勝てるかな、と思った。地面タイプはピカチュウには天敵だ。…のはずだった。彼のピカチュウは土壇場で「なみのり」を使ってきた。何故ピカチュウが。しかし、この技を覚えるということは、つまりこのピカチュウは亜種個体ということになる。そうか、そうだったのか。彼は、それをまだ知らなかっただけなのだろう。私は、さらに今度はスボミ―をペットショップで購入し、念入りにレベルをあげて挑んだ。しかし、ピカチュウの方は、というとそれに対抗して「こおりのつぶて」を放ってくる。
 結局勝てないままだった。一度すら反撃を試みることができなかった。私は彼に挑むのをあきらめざるを得なかった。彼とはそのあと、ずっと音信不通の状態が続いた。そうしていたら、不意に新聞の見出しに、彼の文字が躍りでている。
 「ポケモンリーグ ベスト4 いずれも 10歳の子供」
 そして、そこに出ていたのは、4位ブルー、3位イエロー、2位グリーン、そして1位…レッド。

 彼は私がようやく3つほどバッジを得たころに、優勝を成し遂げた。しかも周りにも奇跡としかいいようのないトレーナーたちがいたというのに、それを打ち破って。彼はそのあと、姿を消した。行方不明ということだった。彼の姿を探しているトレーナーがいて、それが少女イエローだった。
 私は、彼女と戦う前から負けてしまっていた。
 彼女はレッドと同郷にいた人間で、「伝説のトレーナーが生まれる町」マサラタウンの出身であった。彼女は、レッドと付き合っていたらしい。急に音信不通になり、わずかな手掛かりでもいいから見つけようと躍起になっていたらしい。そして、私のところにまでやってきた。
 だが、私はそのころ、すでに彼につながらない状況だった。それを話すと、不意に聞かれた。
 「エリちゃん、レッドのこと、どう思ってた?」
 「へ」
 「なかなかあなた、可愛いからさ、もしかしたらあなたのこと、好きだったかもしれないじゃない?」
 「…」

 たとえ何があったとしても、それを確かめるすべはない。ただ、私は彼を思うと、だんだん辛くなるのだった。
 私はついには7つのバッジを得ることができた。しかし、そうこうしている間にも、彼の音信はどこにもなかった。