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きみはぼくのたいようだ

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重い目蓋をこじ開けると、視界に入り込んできたのは薄暗い天井だった。まだ朝になっていないのかと銀時は開ききらない眸を枕元の時計に向ける。時計の針は、完全に朝どころか昼になろうという時間をさしていた。
じゃぁ、何でこんなに暗いんだ、とまだぎしぎしと音を立てながらそれでも何とか動きはじめた脳でぼんやり考える。そしてようやく耳に入り込んできた音で理解する。

「雨か。」

喉から搾り出された声は寝起きのためか酷くかすれており、雨の音だけが響く静かな暗い部屋の中にかすかに響いて、すぐに消える。それがどうにも落ち着かないような、居心地が悪いような気持ちにさせた。一番合う言葉はしっくりこないといったところか。
もうこんな時間だから起きなければと思うのに、銀時は身体を起こす気がしなくて身体の向きを少しずらしただけでそのまま止まる。
いつもなら容赦なく起こされるというのに。

「あいつ今日は来てねぇのか。」

毎日自分に朝を伝えに来る少年が来ない。おそらく昨日の小さな諍いが原因だろう。「もうアンタなんて知りません」と唇を噛み締めて強く拳を握っていた姿が目蓋の裏に浮かぶ。
自分が大人気なかったとわかっているだけに、思い出した姿になんともいえない苦さだけが体中を駆け巡る。
雨の音しかしない薄暗い部屋がますます気持ちを沈ませて、布団をかぶって今日は何もしないままで過ごそうかと半ば本気で考える。
でもわかっているのだ。
銀時は持てる気力を総動員して何とか身を起こす。
この居心地の悪い空間も。暗い視界も雨だけのせいなんかじゃなく。
ただ一つ、あるべきものが足りていないことが原因であることが。
だからそれを取り戻さないことにはどうしようもない。

「とりあえず迎えに行くか。」

さて、一言目は何を言えばいいのやらと思案しつつ、銀時は部屋のドアに手をかけた。


きみはぼくのたいようだ
(20071001)
作品名:きみはぼくのたいようだ 作家名:柊**