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血塗れたブリキの搭の崩壊

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ぱきん、と何かが崩れていく音がした。



(軽快な音を立てて、見事と言わんばかりに、あけっなくそしてあっさりと)



割れた『それ』はもしかしたら綱吉にとって大事な物だったかもしれないし、そうでないかもしれない。
どちらにしても、もう今となっては綱吉自身にもよく分からなかった。




『雲雀さん』 





そう言うにも、もう声は出なかった。
ただただ掠れるような息の音が喉の奥から這い上がるだけで、その様を、無力な己の姿を実感するたびに、苛立ちと屈辱にも似た失望感が綱吉の胸の中でぐるぐると渦巻いていた。




(そうしてそんな時に、遠い昔に呼ばれていた懐かしいあだ名が脳裏を過ぎる)


(ダメツナ、かー)




本当にそうだ、と心の底から思った。


中学時代も勿論己の無力さを感じて半ば自暴自棄に陥っていた時もあったけれど、今ほどでは無いと綱吉は思う。
だって経験とは名ばかり、血もやむをえないと思いつつ積み重ねてきた物も、ここでは全てが無意味、単なる役立たず。
真の力量を持つ者ならよかったのに、残念ながら俺には無いのです。




(歯がゆさだけが、心に残る)

(人生のラストのラストでも、俺はまだまだ未熟者なのだと、思い知らされた)




ねえ、雲雀さん?

こんな男でもいいんでしょうか?




(ちっぽけで、美貌も、才能も、運も、何一つとしてありはしない俺、でも)

(本当に、いいですか?)





「僕が愛したいから、愛したんだ。他の誰でも無い、僕の意思で」




(そう言ってくれた貴方の声がもう、今となっては遠いんです)

(忘れたく、無いのに。無くしてしまいたく、無いのに)



(つなよし、)




「雲雀さん、」

(愛してます)






ぱあん!!






ああ、やっと貴方の名が呼べた。と思ったその時に、
この虚空に彩られた空間が音を立てて崩れていきました。


(まるで風船が割れたみたいなその音は)

(バット・エンドの合図でした)





さようなら、なんて要らないから。
愛してる、と言って欲しかったんです。

(夢だったとしても、構わないから)








血塗れたブリキの搭の崩壊
(ぱきん、と音を立てて崩れていったのは)
(俺の積み重ねた血塗れた人生たちでした)