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SSやオフ再録

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行事:V.D 贈答(ルック・湊)



「んー疲れたー。」

そう言って湊はグッと伸びをした。

「お疲れ様、湊。」
「いえ!詩遠さんに手伝ってもらって助かりました。ほんとありがとうございます!おかげで早く終わったー。」
「そう?なら良かった。手伝うぐらい、いつでもするから。あ、そうそう、疲れたんだよね?俺、丁度いい癒し、用意してきたから。」
「え?何だろー。」

湊は詩遠に、書類の書き込みを手伝ってもらっていた。
そのおかげで予想以上に早く終われたが、それでもやはり書類処理は疲れる。
伸びをしたあとで首や腕を回していた湊に、詩遠がニッコリと微笑んだ。


「でね?詩遠さんとチョコレート風呂入ったんだー!すっごく甘い匂いでね、トロトロしててね、楽しかったー!」
「・・・・・・あんのクソ英雄・・・。」
「え?なんて?」
「・・・いや?・・・でも、なんで詩遠なんかと一緒にお風呂、しかもチョコ風呂だって?そんなものに入ってるんだよ!」

後日、綺麗な花束を持ってやってきたルックに湊が冒頭の話をすると、ルックがみるみる不機嫌になっていった。その様子も理由も、きっと詩遠なら手に取るように分かったであろう。
湊にしてみれば、なぜルックがなんとなく不機嫌なのか分からない。ここに来る前にイヤな事でもあったのかなぁ、などと思っていた。

「え?なんでって・・・好きだから?」
「・・・・・・。」

分かっている。
湊が詩遠の事を兄のように慕って好いている事は。
そして好意(純粋な意味で)をよせている相手、しかも男同士だというのに、なぜ一緒にお風呂に入るのがダメなのか分からないと思っている事も。
そしてそういった湊的におもしろそうなお風呂、絶対入りたがるであろう事も。
そして、こうやって話してくれている限り、詩遠との間にまったくもって何もなかったであろう事も。

だが脳と心臓は違うのと同じで、分かっていても納得出来る訳がない。
笑顔で“そうなんだ?楽しかった?良かったね”などと、天地がひっくりかえっても言える訳がない。
そしてイライラとしているが、かといってその憤りを湊にぶつけるのも見当違いな事だと分かっている。
だから余計にイラつく。

ていうか詩遠め、覚えてろよ。
ルックは思った。
絶対湊が楽しそうに僕に報告するであろう事まで分かっててやっているよね、アイツ。

「どうしたの?ルック?あ、分かった、アレだよきっと、血糖値が下がってるんだ。」
「は?」
「詩遠さんが言ってたよ。疲れたりしたら血糖値が下がってボーっとしたりイライラしたりするんだって。だから疲れた時には甘いものがいいんだってー。チョコ風呂はね、さすがに味は薄かったけど、ほんと甘い香りしたしねー、他にも保湿や美肌効果、えっとそれとか血行促進とか老廃物を出してくれたり、とかの効果もあるんだってー。」

て、味見したんかぃ!!
と内心で軽くつっこんだ。

「だからね?ルック。ルックもチョコ風呂、一緒に入ろうよ?」
「え?」
「楽しいよ!それにね、ほら、世間ではバレンタインでしょ?この綺麗な花束、バレンタインのブレゼントなんだよね?えへへ。でね、僕からはチョコ、て思ったんだけど、ルックって甘いもの、好きかどうか未だにイマイチ分かんなくてー、で、チョコ風呂ならいいかなーて思って!」

嬉しそうにニッコリと湊が言った。
そんな笑顔を見られただけでも僕は嬉しいんだけどね・・・とルックは思う。相変わらず口には出さないが。

「ね?」
「う・・・うん。」
「詩遠さんにはね、もうチョコ作ってね、あげたんだ!僕はねー例のチョコ風呂とね、すっごく綺麗なカード貰ったー。」

フワフワした気持ちが、最後の台詞を聞いた時にカチーン、となる。
ほんっとこの子ってっ!!
全く!
・・・いいよ、その代わり僕はそのチョコレート風呂とやらで存分に君を味わわせてもらうから。

ルックはふ、と笑みを湊に見せた。
ルックの珍しい笑みを見て、それだけで湊は頬を赤くして喜んだ。
・・・詩遠がそんなルックの表情を見れば、あきらかにろくでもない事をたくらんでいるんだろうな、とすぐに分かったであろうが。
作品名:SSやオフ再録 作家名:かなみ