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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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罹災2



とりあえず簡単にヒオウにヒオウの事を説明した。

「って簡単すぎんだけど。俺の名前がヒオウで、お前らに協力している状態で、ある事故で記憶喪失になったって・・・それだけ!?」
「えー、別にいいじゃない。−−−つかめんどくさい・・・。」
「っておいっ。今ボソッと本音はいたよな!?ちっ。なんで俺がこんな奴に協力・・・って何の協力だよ。だいたい何でこいつの部屋に篭る訳?俺の家はどこなんだよ。」

ヒオウはヒナタをジロッと睨みながら言った。
ため息をついてからシュウが言った。

「まあ、そう仰るのもごもっともです。正直に言いましょう。このヒナタ殿は戦争をしております。ここは本拠地であり、ヒナタ殿はここの主でもあります。あなたは実はヒナタ殿と恋人同士で同じ部屋で寝食を共にされているんです。ヒナタ殿は人気者でいらっしゃいますから、あなたが今記憶喪失だと周囲にばれてしまうと、普段からやっかんでいる輩にあなたもヒナタ殿も狙われる口実を与えてしまう事になるんです。今は戦時中。ただでさえ大変なときに余計な争いごとや問題は起こさないに越した事はありません。ですからとりあえず名案が出るまでくらいは申し訳ありませんが、部屋で大人しくしていてもらいたい。そんな状態でフラフラされてもボロが出ますので。これで分かってもらえましたか?」

いけしゃあしゃあと語るシュウにヒナタがかみつこうとした。
シュウはすかさずボソッとヒナタに呟く。

「手っ取り早く大人しくしてもらう為と、おまえと恋仲だという事にショックを覚えてもらってあわよくば、と思ったのでな。とりあえず黙ってろ。」
「だからといって、勝手に話し作んなっ。つかまさかお前、普段の僕に対する仕返しじゃないだろうな・・・?」

ヒナタもボソッと返した。
ルックは呆れてものもいえないといった風情。
そしてヒオウを見ると。

「・・・そうだったのか・・・。」
「え?ちょ、なんか納得してんだけど。何ですかこの人。ちょ、シュウ。どうすんだよこれ。」
「まさかここまで素直だとは・・・。普段の彼からは想像もできんな・・・。」
「それだけ?ちょ、どうすんだよマジで。僕的にどう対応すればいい訳?」
「まあ、その辺は自分でどうにかしてくれ。」
「え、何その言い草。」
「それじゃあ、ヒナタ?行こうか。」

シュウにつかみかかるヒナタを抱きかかえるように引き剥がし、ヒオウは歩き出す。
ルックの方を見て、どうやったか知らないが先程のようにヒナタの部屋まで送るよう言いながら。

ルックは青い顔のまま手を挙げる。
ヒナタがギャーと騒いでいるのを無視して、ヒオウはシュウに言った。

「それじゃあ部屋に篭ってる。良い対処法を早急に頼む。後は任せた。」

シュウが冷や汗を掻きつつ黙って頷く中、3人は消えた。

「ちょ、ルック、どうにかしてよ、つーか、しろっ。」
「う・・・」

部屋の中につくと抱えられたままヒナタが必死になってルックに言うが、ルックは青い顔色のまま珍しく困っていた。

「どうしたんだヒナタ。今更照れる事はないだろう?寝食を共にしている仲なんだ、恥ずかしがるなよ。」
「ギャー何言ってんのマジ何言ってんの!?つーか離せバカっ。」
「・・・口が悪いな・・・。俺マジでお前と付き合ってんの?・・・うーん・・・ま、いいか。」
「何あっさり納得してんの!?よく考えて!?僕もあんたも、お・と・こ・だからっ。」

じたばた足掻いて自力で離れ、ヒオウに指差しながらヒナタはつっこみをいれた。
ルックはとりあえずこの場にいるものの、触らぬ神に何とやらで黙って突っ立っている。

「え?やっぱ男なのか。いやまあおかしいとは思ったんだよ、口は悪いし、戦争してるっつーし。いや、お前みたいなちびが戦争してる時点でおかしいがな。だがシュウって奴の説得力ある話からと、お前は見た目女の子にも見えんことはないしで、じゃあ多分女かなと。」
「ちょっと待て。今のは突っ込みどころ満載なんだけどー」

サラッと言ってのけたヒオウに殴りかかろうとするヒナタを、我に返ったルックが引き止める。

「ちょっと、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ?でもまあ、とりあえず良かったじゃない、男と分かった訳だし・・・」

あ、そうかとほっとしたヒナタに次の台詞が突き刺さる。

「まあ別に恋人だったってんならきっと俺はどっちでもいける口だったんだな?構わねえよ、まあ。」
「・・・ルック・・・。もう、殺っちゃってもいいかな、もう・・・。誰だよ、これ、まじで。」
「おいおい、やるってまだ明るいってのに、その気満々じゃん。なんだよ、照れ隠しって訳?ほんとはお前俺の事すげえ好きなんじゃ・・・?」

ぷちっ。

ルックには何かが切れたような音が聞こえた。
俯いて震えているようなヒナタがスッと手をのばしてルックをつかんだ。

「・・・ルック?さっきのカゴは?」
「は?」
「いいから黙ってさっきの例のものが入ったカゴのとこまでとばせや。」

・・・いつものヒナタじゃない・・・。

多分何かがぶっ飛んでしまったのであろう。
ルックは怯みつつも言われた通りにした。

「あれ?ヒナタはどうしたんだ?」
「・・・あんた・・・、いや、何もないよ・・・。・・・僕帰ってもいいかな・・・。」

憔悴しきったルック。
大丈夫か?とヒオウに普通に心配され、さらにどっと疲れが増した。

「やあお待たせダーリン!!」

間もなくヒナタが物凄い勢いで部屋に走ってもどってきた。手に例のぶつを持ち。

「ああ、お帰り、えーと、ハニー?」

あまりの勢いに押されて少し後退するヒオウに、ヒナタはカゴを差し出した。

「これっ。愛を込めて作ったから、がっつり食っ、いや、食・べ・てっ?」

可愛らしく言い直し、ニッコリ笑っているヒナタを、ルックは恐ろしいものでも見るようにして言った。

「ちょ、それって」

すべて言う前に凄まじい勢いでヒナタに睨みつけられ黙りこむ。

ヒナタの勢いに怪訝な様子のヒオウはとりあえず1枚取る、が。

「遠慮すんな、よっ。」

ヒナタは自らガサッと取り上げ、えっ?と言いかけたヒオウの口に笑顔のまま放り込んだ。


ヒオウが目覚めたのは翌日も遅い時間だった。
暫く混乱している様子だったがどうやら元のヒオウだと分かった瞬間、ヒナタに”会いたかったよヒオウっ”と抱きしめられ呆然としていた。

記憶喪失していた時のことは憶えていないようではあったが、何となく暫くはヒナタに対して警戒している様子がルックには滑稽であり不憫でもあった。

そしてヒオウにもナナミ料理はある意味ラスボスよりも強しという見解が生まれた。

「で、あんなナナミクッキーを大量に食べさせて、おかしくなるどころか意識さえ戻らなかったらどうしてた訳?」
「えー?でも元にもどったんだからいいじゃん。」

後でルックはヒナタに聞くとそうサラッと返され、また新たに天魁星に対する認識を嫌な風に深めていた。