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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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放埓



本拠地に戻るとシーナがいた。シュウが広間で待っているとのこと。

「なんだよシュウ。」
「無事戻ったか。ティントの協力も得られた。これでこちらから王国軍に撃って出ることもできる。どうやら王国軍は今ミューズに兵を集めているらしい。狙いはわからぬがグリンヒルを取り戻す好機なのは確かだ。」

一同は沸きあがった。
特にテレーズは感無量といったところだった。

明日グリンヒル解放に撃って出ると決まった。


ヒナタはその夜なんだか寝付けず、城内を徘徊した。色々な仲間に話しかけた。


ヒオウは戦争には基本参加しない。

だから今回もいつもどおり留守番か家に戻るかになるので、どうしようかと思っているところをビクトール達に捕まり酒場に連れて行かれた。

「まあ、たまには俺らに付き合えよ。」
「お前らに付き合うときりがないからね。帰られなくなるじゃないか。」
「いいじゃねえか。ヒナタんとこ泊めてもらえよ。」

3人はテーブルについて酒を飲み始めた。
ヒナタといえば、とフリックが切り出した。

「そういえばヒオウ、お前ヒナタのことどう思ってんだ?」
「は?ああ、もちろん気に入ってるよ?じゃないとこんなところまで来ないでしょ。まあ暇つぶしくらいにはなるけど。」
「ま、そりゃそうだ。」
「ふーん。もしさ、あちらさんに気が合う奴が先に出来てたら、勿論王国のほうにいたって訳だよな?」

ビクトールが合いの手を入れた後、フリックがまた聞いた。

「まあそうだろうね。僕としては別に都市同盟がどうとかハイランドがどうとか関係ないからね?・・・ああでも紋章の事思えばハイランドは関わりたくないかな。」
「うわっ、そう聞くとヒナタさまさまだな。お前だけは敵にまわしたくねえっ。」
「まあ、僕はヒナタを愛してるからね。」

少し間をあけてからまたヒオウは続けた。

「あれ?無反応?ここ冗談なんだけど。」
「いや、ある意味冗談に聞こえないぞ。お前のヒナタに対する過保護っぷりを見てればな。」

フリックに言われ、そう?と頬杖をつきながらヒオウが酒を飲む。
横でビクトールもうんうん、と頷いている。


ヒナタはそろそろ休もうかなと部屋に戻った。

すると突然人影が現れた。

「っ誰だっ。」

ヒナタはトンファーを持ち構えた。
すっとその人影が少し近寄った。

女だった。
金髪が、まるで三日月の半分が頭から生えているかのように見える。
肌はかなり日焼けしたような色をしていた。
白を基調とした服には変わった模様がデザインされている。

手には鞭があった。

「・・・。えーと、どこから突っ込めばいいのかな・・・?とりあえず、何?何の用?あ、ルックみたいな事言っちゃった。・・・あ。ま、まさか!?」
「・・・そのまさかだ・・・。私はルシア。お前を・・・」
「よっ夜這いですかー!?」
「っふっ、ふざけるなあっっ。手に武器を持ってるだろうがっ。」
「えー?僕激しいのはちょっと・・・」
「こいつ・・・っ。暗殺だっ。あ・ん・さ・つっ。」
「・・・鞭で・・・?マジですか。いやー、普通は刃物とかさー、まあいっけどねー?」

その間にもルシアは鞭を振るって攻撃してくる。
ヒナタは難なく避けながら喋り続ける。

「っていうかさー、ねーねー、その頭どうなってんの?なんか三日月くっついちゃった?何か刺さりそう・・・あっ鞭と見せかけて隙を見てそっちで攻撃するってこと!?いやあ、成る程ねー。鞭は無いなって思ってたんだよねー?」
「っくそっ、なぜ当たらないっ。っていうか、違うわー!!貴様さっきからふざけてばかりだなっ。貴様さえ殺ってしまえばこの不毛な争いは終わるんだっ。」
「えー、やだなー僕、さっきも言ったけど激しいのはねー。どうせならもうちょっと大人しめでお願いします。」
「だからふざけるなー!!」
「・・・うーん、そろそろ避けるのも疲れてきたんだよねー。仕方ない、か。・・・じゃ、いくよ・・・?」

ふと真面目な顔をしたかとおもうと、ルシアにはヒナタはすっと消えたように見えた。
だが気付けば目の前におり、あっと思った時には喉下にトンファーが当てられた状態で止められていた。

「っくっ・・・。」

ルシアは動けなかった。喉に突きつけられているからだけではなく、ヒナタ自身にも圧倒されていた。


ヒオウと腐れ縁2人はヒナタの部屋に向かっていた。
ヒオウが早々に、といっても帰るには遅いのでヒナタの部屋に行くというと、じゃああいつの部屋で飲もうぜとビクトールが言い出したのだった。
それじゃあ自分が酒場を出る意味もないし、ヒナタも早くに眠れないじゃないかとヒオウが反論したが、まあちょっとだけだからよ、とビクトールに押し切られ、知らないよ、と3人で歩いていたところだった。


「何かヒナタの部屋から物音がしない?」

最初に気付いたのはヒオウだった。まさか!?と3人は駆け出す。

「ヒナタ!?大丈夫っ!?」

3人は部屋に駆け込んだ。
部屋にはヒナタと、見知らぬ少女がいた。

「あっみんなっ。この人がいきなり夜這いしてきたんだっ!!」
「っだから違うわー!!」
3人は、なんだか拍子抜けした。

だが多分この女は暗殺者だろう。
なぜか鞭を持っているが。

「えーと、なんだ、とりあえず捕らえて牢に入れておこう。」

ビクトールが言った。するとヒナタが言った。

「うーん、逃がしてやってよ。」
「なんでだ?逃がしたらまたいつ来るか分かんねえんだぞ!?」
「んー、まあ来ても僕は大丈夫だよ。それにいくら油断してたとはいえ盟主の部屋に入り込んでたんだぞ。牢だって脱走すんじゃない?」

恩には着ないぞというルシアに、ヒオウは今度来ることあるならその髪型の秘密教えてねーと言って嫌がられていた。

「大丈夫だった?ヒナタ。」

ヒオウが心配そうに聞く。

「おう、まーな。っていうかマジで盟主の部屋に簡単に侵入許すって、どうよ?いくら明るく賑やかがモットーっつってもねえ。」

元気そうにぐっと力こぶを出すように片腕を上げて曲げたあと、呆れたようにつけたした。
ヒオウはそだね、とニッコリしつつ、次に来る事があれば、あの女許すまじ、などと思っていた。