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FF7ヴィンセントのお話

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【9.天使と悪魔】


 大空洞の奥深く、ホーリーが渦巻いていた。その前に立ちはだかるのは・・セフィロス。
 ジェノバに侵され、変わり果てた邪悪な姿がホーリーを遮る。
「これが最後の決戦だ。いくぞ、みんな」
 クラウドのかけ声を皮切りに全員がセフィロスに立ち向かう。
 星の生命をかけた最後の攻防が始まった。

 激しい攻撃を受けながらヴィンセントは必死にセフィロスに叫んだ。
「セフィロス!目を覚ますんだ!お前の母はジェノバじゃない。ルクレッツィアという美しい女性なんだ!」
「無駄だ!ヴィンセント、もうセフィロスはセフィロスではなくなってしまったんだ」
クラウドが首を振る。
 無駄だということはわかっていた。セフィロスはもう取り返しのつかないところまで来てしまったのだ。しかし、ヴィンセントは叫ばずにはいられなかった。
「目を覚ましてくれ!セフィロス!」
 冷酷な表情を何一つ変えずセフィロスはヴィンセントに炎を浴びせる。
 身を焦がされ、たまらず膝をつく。
「ケットシー!ケアルガを」
 クラウドの指示がとぶ。
「はいよっ」
 癒しの光に包まれ再び立ち上がるヴィンセント。
(・・やはりもう何を言ってもだめなのか・・・)
 虚しくセフィロスを見つめる。
 彼は不敵な笑みを浮かべ、全員に容赦ない攻撃を加え続ける。
 クラウドをかばったティファがもろに攻撃を受けた。
 倒れるティファ。
「ティファー!誰か、アレイズを!」
 クラウドの悲痛な叫びが響く。
 ヴィンセントはすぐにティファにアレイズをかけ、意を決したかのようにデスペナルティを引き抜いた。
(私はルクレッツィアを止めることができなった、見ているだけしかできなかった、お前を宝条から取り戻せなかった、眠ることしかできなかった・・。すべての罪は私にある。だが、お前がどうしてもこの星のすべての生命を代償に欲するならば・・私はお前を葬り去ろう。それがせめてもの私の罪の償いだ!)
 デスペナルティが火を噴く。
 1発、1発が彼の心に食い込む。

 クラウドの剣がうなり、バレットのマシンガンが吠え、シドの槍が貫いた。
 レッド13が牙を突き立て、ティファの拳が炸裂し、ユフィの技が乱舞した。
 ケットシーは必死に傷ついた仲間達を回復した。
 皆がもてる限りの力を発揮した。
 少しづつセフィロスの動きが鈍くなってくる。
「セフィロス!これが究極の奥義だ、くらえー!」
 クラウドの超究武神覇斬がセフィロスを切り刻む。
 ゴーという音をたててセフィロスは沈んで行く。
「やったか?!」
 クラウドの息はまだ切れている。
 セフィロスが沈み消えたと思った途端、急に辺りが明るくなった。
「何だあ?あれは!」
 バレットが叫んだ。
 何かが降りてくる。神々しい光を伴ってゆっくりと。
 片翼の天使・・・
「ち、さっきのは所詮虚像ってとこか。こいつが本体かあ?」
 シドが舌打ちする。
 紛れもないそれはセフィロスの本体だった。美しく白い肌が輝く。
 天使の翼から何かの光がほとばしる。
「よけろ!」
 クラウドの叫びも空しくバレットとシドが光を食らった。両者とも一撃にして相当のダメージを受ける。ケットシーがすぐにケアルガをかける。
「よくもやりやがったなー」
 シドが先陣を切って槍を突き立てる。しかし、セフィロスの肌には傷一つつかない。
「何だあ?こいつ全然歯が立たないぜ!」
「いや、少しづつでもダメージを与えられるはずだ、あきらめるな!力の限り戦うんだ!」
 ヴィンセントもひたすらデスペナルティを撃ち続けるが、ほとんど通用しないことを悟り、魔法攻撃に移る。紅いマテリアが光り、いずこよりか現れたバハムートが烈火のブレスを打ち吐く。セフィロスにヒットする。さらに、ヴィンセントは魔法を唱え続ける。
 セフィロスの指先から発せられた光線がヴィンセントの腿をえぐった。
 激痛が走る。
 カオスが疼く。
(・・だめだ、お前は出てくるんじゃない!)
 痛みをこらえながら、ヴィンセントは必死にカオスを抑制していた。
 カオスに変身してしまえば、セフィロスを倒すまで元には戻れない。ヴィンセントは今となっても自分の意識の届かない状態でセフィロスを手にかけてしまうことを恐れていた。
 ヴィンセントを見かねたシドが叫んだ。
「ケットシー!ケアルガを」
「あきまへん、もう手いっぱいですわ、あ、クラウドはんが大きいの食らいましたわ。こっちを先にしまへんと・・」
「私のことはかまわなくてもいい・・」
 ヴィンセントは脚を引きずりながら、魔法の詠唱を続けた。
 脚からおびただしい血が流れる。
 それ以上に彼の心は血を流し続ける。
 魔法がヒットするたびに心が裂かれる。
(セフィロス!早くライフストリームに還れ!)
 悲壮な心の叫びが魔法となりセフィロスに浴びせられる。
 その時ヴィンセントに一瞬のすきができた。再びセフィロスから発せられた光の筋が一直線に彼に飛んでくる。誰もかばう余地がない。光はヴィンセントの胸を貫いた。
 意識が遠のく。
(・・・もう、だめか・・・セフィロス・・・すまない)
 カオスの意識が目覚めた。
 はじきとばされながらヴィンセントはカオスへと変わった。
 片翼の天使の前に現れた紅翼の悪魔。
 カオスはその翼で舞い上がると、銀の刃をセフィロスに浴びせた。セフィロスは左腕で受け、右腕の翼で反撃する。
 カオスは全身で攻撃を受け止めてまた反撃する。
 力と力が拮抗する。
 そこから力場が生じ渦巻く。
 遠い昔に天使と悪魔の戦いがあった。
 まるで、その再現のような光景が繰り広げられる。
 昔と違っているのは倒されるべきは天使の方だということ・・・
 カオスの捨て身の一撃がセフィロスにヒットした。
 翼が裂け、白い羽が飛び散った。バリアが破れたのだ。
「今だぜ、クラウド!」
 バレットが叫んだ。
「セフィロス、もう終わりにしよう・・・」
 クラウドは天使に向かってつぶやいた。
「最後の切り札を使うぞ、みんな援護してくれ」
 クラウドは目を閉じて、詠唱に入った。
 アルテマウェポンにはめ込まれたひときわ大きな紅いマテリアが光りを放つ。
 長い年月を経て結晶化した神秘のマテリア。
 詠唱は続く。
 望まない死を受け入れなければならなかった少女への鎮魂歌のように。
 そして現れたのは、光り輝く古の騎士達。
 円卓の騎士達がセフィロスへと飛んでゆく。
 ある者は剣で、あるものは斧で、ある者は槍で、ある者は炎を伴い、ある者は雷を伴い・・・それぞれが渾身の力を込めてセフィロスをうち砕く。
 最後の騎士がその大剣を振り下ろしたとき、セフィロスの断末魔が響いた。
 白い羽をまき散らし、ホーリーの中へと崩れ落ちていく片翼の天使。
 すぐそばで浮遊していたカオスの奥でもう1つの意識が覚醒した。その意識はカオスの意識をしのいだ。
(セフィロス・・・一緒に行こう・・・)
 カオスは天使のもとへ飛び寄り、崩れ続ける天使を抱いた。
 天使と悪魔がともに光の中へ墜ちていく。
「ヴィンセント!戻ってこい!」
「だめだ、クラウド!ここも崩れる。早く来い。逃げなければ俺達もやばい」
シドが手招きをする。
「だって、ヴィンセントがまだなのよ!」
作品名:FF7ヴィンセントのお話 作家名:絢翔