りりなの midnight Circus
第十六話 ベルディナ・アーク・ブルーネス
そして、終わりの日はやってきた。
あれ以来、全てと遺恨を残したエルンストは、そのままただながされるままに状況を見守っていた。
おそらく、近いうちにベルディナ・アーク・ブルーネスから何らかのアクションがあるだろうと予想し、次に飛ばされる場所はどこかを想像する毎日だった。
しかし、彼の元にやってきたのは時空管理局情報部第三課、主に時空管理局内の情報セキュリティーと違反犯罪者の摘発を行うセクションの人間だった。
とまどいと反発の起こる中、全員の目の前でエルンストが告げられた罪状は、独断専行、作戦無視、報告義務違反といったものだった。
(国家反逆罪に問われないだけましか)
と淡泊な感想を思い浮かべる彼は、それに反発するアリシアやなのは、ヴィータをなだめすかし、
「とっとと連れて行ってくれ。こいつ等が暴れると怖いぞ」
といって大人しく縛に付いた。
おそらく、これはベルディナ・アーク・ブルーネスの差し金ではないなと密かに思ったエルンストは、事態が思わぬ方向、ベルディナ・アーク・ブルーネスでも想像仕切れなかった方向へと向かいつつあるのではないかと推測した。
時空管理局司法裁判所の地下施設の最深部。特A級の犯罪者を幽閉するための最深度地下施設へと護送されたエルンストは、その施設の厳重さを見て、
(これでは俺でも抜け出すのは難しいか)
と思い至った。
後から聞かされた話だが、犯罪者を出した特務機動中隊はその後、無期の活動停止処分を受け、殆ど組織解体に近い状態にまで追いやられたと言うらしい。
牢獄で出される粗末な食事を口にしつつ。こんなモノならいっそのこと点滴か何かを注入される方がましだと思うほどに彼は落ち着いていた。
奴は必ず来る、エルンストはそう確信していた。
そして、その日は彼が幽閉されて4日目に訪れた。
特にやることもなく、裁判のための準備も行われることもなく、エルンストはゆったりとした心持ちで粗末なベッドに横になって過ごしていた。
「よう、なかなか優雅な生活じゃねぇか」
目を閉じていた彼はそれに気がついていたが、あえて先方が話しかけるのを待っていた。
「思ったより早かったな。やっぱり、あんた暇なんだろう?」
エルンストは目を開かず、そのまま横になって彼を迎えた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪